フジテレビが「アドレッサブル広告」開発 商用化に向け技術実証加速

アドレッツサブル広告のイメージ図(フジテレビ提供)

 地上波デジタルテレビ放送番組中のCMを視聴者属性やエリア、興味関心情報などのデータで識別してテレビ端末ごとに切り替えて表示することが可能となる「アドレッサブル(識別)広告」について、フジテレビが商用運用開始に向けて技術実証を加速させている。テレビCMの広告効果が飛躍的に伸長する可能性が高い商用運用は、スポンサーや広告代理店などでも注視されている。

 フジテレビは2010年代中盤から、欧米ですでに技術開発が始められていた「アドレッサブル広告」について研究開発を開始。地上波デジタル放送の日本規格(ISDB方式)での独自開発を民間放送各社に先駆けて実施し、現在は民放各社の中で唯一、フジテレビが開発を続けている。

 アドレッサブル広告の仕組みは、番組内容は放送波で、CM内容はテレビに結線されたインターネット回線経由でハイブリッドで各テレビ端末に届けられる。放送の良質なコンテンツ内容とともに、CMも放送局の厳密な考査を経るため信頼度が担保される。また、ネット回線で高速にダウンロードされたCMが画面表示されるため、表示が遅れたり不鮮明になる画像障害も防げる。

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 アドレッサブル広告が対応できるテレビ端末には、ネット回線の結線が必要となる。テレビ端末のネット結線率は、65.6%(ビデオリサーチ ACR/ex 2025年4~6月 東京50キロ圏)と増加が急速に進んでいる。

 フジテレビは、2016年に初期実用を開始し、約10年の開発期間を経て、昨年6月には放送中の実用表示に成功。現在は連日、一部放送時間帯に、自社サービス案内などをテレビ端末が保持する郵便番号情報で地域別に異なる内容で画面表示し、「アドレッサブル広告」であることを画面告知している。

 テレビCMは大量の視聴者に向けて消費者への到達度(リーチ)で圧倒的な広告効果を長年発揮し続けてきた。一方、インターネット広告が台頭し、エリア、閲覧サイト履歴、利用者属性、興味関心情報などからターゲットとする広告市場が伸長するとともに、ネット回線経由の動画配信も存在感を飛躍的に増している。

 こうした背景から、視聴者数が多い地上波放送のCMでも、ターゲット広告が可能な技術開発が期待されてきた。アドレッサブル広告では、細分化された地域情報や番組アンケートで得られた視聴者情報などを活用し、個人を特定しない形から規定に沿って運用を行う計画だ。さらに民放各社が運営する動画配信サービスのTVerとの連携も技術研究を進めている。

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 商用運用には、スポンサーの理解が不可欠となるが、大手広告代理店などは商用化に向けたセールスについて検討を開始しているという。

 同社で10年以上にわたって開発を主導するテックアートデザイン局統括エンジニアの伊藤正史氏は、「ネットの伸長の中でも、テレビ放送が引き続き安定的に番組を届けて収益を得るには、アドレッサブル広告が必要と考えて開発を続けてきた」とテレビ全盛期から10年来の開発継続の意図を強調する。

 さらに伊藤氏は「テレビ放送の従来の大量リーチ広告と、ターゲットを絞ったアドレッサブル広告の利点などをミックスした形でCMがより多面的に使われることを期待したい」としている。

 フジテレビのアドレッサブル広告と偽情報対策の技術開発については、昨年、日本民間放送連盟から「日本民間放送技術連盟賞 技術部門優秀賞」、今年、一般社団法人映像情報メディア学会から「技術振興賞・進歩開発賞」、公益財団法人放送文化基金から「第52回放送文化基金賞」が授与されている。

(近藤豊和)

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