グリーンITへの期待感が高まる中、都内に大規模データセンターを4基運営する東京電力は、電力会社の強みを活かし、高圧変電所と夜間電力による蓄熱層を備えた設備とすることで、電力消費とCO2排出の抑制を実現している。
前編では、IT機器で消費される電力の増加傾向と、最新のデータセンターにおける電力効率の悪化の現状について触れた。後編では、再び東京電力の執行役員で情報通信事業部長を務める清水俊彦氏による講演内容から、同社の最新データセンターの効率性の秘密について紹介する。その前に、データセンターのエネルギー効率について見てみる。
データセンターのインフラ効率は、DCiE(Data Center infrastructure Efficiency)とそのDCiEの逆数表示となるPUE(Power Usage Effectiveness)という指標が使われる。
データセンターに電力が供給されると、UPSやPDU(ラック用電源タップ)といったにIT機器側に供給される電力と、空調や照明などの施設に利用される電力とに分配され、UPSからさらにサーバや周辺機器に電力が送られる。最終的にIT機器で利用される電力と、データセンターで使用される総電力との比率がDCiEとなる。
一般に、IT機器へ6割、その他に4割を使用すると、DCiEで60%(PUEで1.67)となって、これが平均値とされ、この値より良い数値ならば、環境にやさしいデータセンターとの評価を受ける。
だが、清水氏は、「今後DCiEは悪化する一方」との見方を強める。その理由として、データセンターの信頼度(Tier*1)がますます要求されることが明白であり、Tier1(現在の最先端のデータセンターはこのレベル)から近い将来Tier2へと移行するにしたがって、冗長構成による電力ロスや電力密度の上昇による冷却電力の増加などが予想されるからだという。
「事実、DCiEの数値が同じでも内容の良いデータセンターと悪いデータセンターが混在している状態が現在の有様だ。そのため、今後はDCiE数値の上昇ではなく、ビジネスから要求される信頼度や処理能力、電力密度を確保しながら、いかにエネルギー効率を向上させていくかがデータセンター戦略では重要となる」(清水氏)
*1 米国国内にデータセンターを構える企業約60社が集まって構成する団体「The Uptime Institute」(TUI)が発行するガイドライン「Tier Performance Standards」のこと。運用で蓄積されたノウハウを集大成し、データセンターに要求される施設のパフォーマンスレベルをTier1〜4までの4段階で示すもので、データセンター設計でのベンチマークに利用される。電力の供給経路やUPSの数、監視要員と勤務態勢など細かく規定し、それがデータセンター格付けともなっている。例えば、1平方メートルあたりの最大電源容量では、Tier1が320W以下、Tier2が540W以下、Tier3が1600W以下で、Tier4は1600W以上、となる。
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明治学院大学 経済学部准教授