10のチェックリストがあなたの弱みを浮き彫りにする:問われるコーチング力(2/2 ページ)
組織を率いるリーダーに必要なのは、自分自身を深く分析し強みと弱みを把握することだ。巨人の原監督、西武の渡辺監督は自分のスキルを生かすことにより、リーグ優勝という成功を手に入れたという。
リーダーは弱みを補う義務がある
自己分析して自分が分かれば、リーダーとしての器を知る。そして、自分の器と現在の仕事との間にギャップがあるなら、そのギャップを埋めるために努力すべきだと気付くのである。
弱いところは気にせず、強いところだけ伸ばせばいいのではないかと思う人もいるだろう。しかし、それは若手のビジネスパーソンの話である。リーダーとなれば、弱いところは補わないといけない。「人材教育には興味がない」などとは言っていられない。興味のある、なしという問題では済まされない。強いところは伸ばしていく一方で、弱いところ、足りないところはまずは自分でしっかりと認識し、改善に努める。もしくはそれを補ってくれる「右腕」を持つことである。右腕を育てるノウハウは、手前みそながら、最近出版された拙著『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)をご覧になってほしい。
稲盛和夫氏や松下幸之助氏は、この5つのスキルをバランス良く持っていると思う。一方で、ライブドア元社長の堀江貴文氏は、達成・成果が強い傾向があったのだろう。
西武の渡辺監督や巨人の原監督に関していえば、今シーズンは人材開発・人材教育に尽力したのではないかと思う。巨人については、高額な年俸をもらっているそうそうたるベテラン選手がいるが、原監督は彼らを控えに回すことも多かった。逆に、坂本選手をはじめとした若手を積極的に起用した。彼らが存分に能力を発揮し優勝したのである。どこかを重点的に伸ばしていくということも、プロ野球のような1シーズンで勝負する場合には有効かもしれない。
自己分析に関して、指摘しておきたいことがある。日本企業の経営者やリーダーは、「組織に対する姿勢」、「人間性・敬意」、「人材開発・人材教育」が高い傾向にある。よって、「仕事に対する姿勢」や「達成・成果」を強化したら、素晴らしい成果が残せるようになるはずである。
一方で、欧米企業の経営者やリーダーは、「達成・成果」や「仕事に対する姿勢」が高い傾向にある。しかしこれだけが高いとなると組織が崩れる。米Lehman Brothersや米Merrill Lynchなどが破たんや買収に追い込まれたのもこれに起因するのではないか。欧米企業のリーダーたちは「組織に対する姿勢」、「人間性・敬意」、「人材開発・人材教育」について、意識を改善したらいいと思う。
弱いところを改善するためには、エグゼクティブコーチが必要だと考える。自分で弱みを分かっていても、どのように改善したらいいのか分からない人も多い。エグゼクティブコーチが改善方法をフィードバックしてくれるはずだ。
米GEのジャック・ウェルチ氏をはじめ、欧米企業の多くの経営者がエグゼクティブコーチを抱えているのはそのためである。今後は日本でもエグゼクティブコーチのニーズは高まってくると確信している。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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