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「海外で通用しないブランドは日本でも駄目」――良品計画・松井会長

海外戦略を重視する良品計画は、会社設立後すぐにグローバル展開を加速させ、今や100を超える海外店舗を運営する。しかし、決して順風満帆な道のりではなかった。社内に広まる慢心や競合の参入によって厳しい経営状況に陥った時期もあったという。

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 上場企業の倒産件数が戦後最悪の45件を記録するなど、2008年度は日本企業にとってかつてないほどの傷跡を残した。2009年度に入っても不況の底は見えず、5月にピークを迎える3月期決算発表によって多くの企業が資金繰りに支障をきたすという、いわゆる「5月危機」の懸念は日増しに強まっている。

 しかし、光明も差し込む。一時期と比べてM&A(企業の合併・買収)は減少しているものの、企業円高基調を足掛かりに多くの企業では海外進出を図る絶好のチャンスを迎えている。少子高齢化で将来的に日本の消費者市場が縮小していく中、海外マーケットに打って出る戦略が不可欠であることは間違いない。


良品計画の松井忠三会長
良品計画の松井忠三会長

 早稲田大学 IT戦略研究所は3月12日、企業の経営層向けセミナー「第25回 インタラクティブ・ミーティング」を開催した。「無印良品」などを手掛ける良品計画の松井忠三会長が基調講演に登壇し、「2010年度には海外売上高を総売り上げの2割まで伸ばし、真のグローバル企業を目指す」と海外戦略に対する意気込みを語った。

 良品計画は1989年の設立当初から、海外への店舗展開を積極的に推し進めてきた。1991年7月、ロンドンに海外1号店を出店するのを皮切りに、ヨーロッパ、アジアのさまざまな地域に進出した。2007年には世界最大の小売市場である米国に悲願の出店を果たし、海外店舗数は100を超えた(2009年3月現在)。「海外で通用しないブランドは日本でも通用しないという意識が海外戦略を支えている」と松井氏は強調する。

 1960年ごろまで日本製品は「安かろう、悪かろう」とやゆされ、海外の消費者からは見向きもされなかった。その後、先人たちの努力によって製品の質を高め、負のイメージを払拭する。無印良品のコンセプトは「わけあって、安い」だったが、これは、価格は安いが機能性を重視するなど品質は落とさないという意味合いが込められていた。

成長路線から一転…

 良品計画は順風満帆でビジネス成長を続けた。1995年に株式公開し、1999年には連結売上高が1066億8800万円、経常利益が133億6000万円で、1990年と比べてそれぞれ4.3倍、123倍という高数値をたたき出した。

 ところが、1999年をピークに業績悪化の道をたどる。2001年には経常利益が56億円に、当期利益はほとんどゼロにまで落ち込む。業績不振の原因として松井氏は「無印(良品)はこれでいいのだという慢心やおごりが社内にまん延し、スピード感のない経営運営が行われていた」と振り返る。加えて、100円ショップ、衣料専門店「ユニクロ」、ドラッグストア「マツモトキヨシ」など格安で商品を提供する企業が参入してきたことで、従来の「わけあって安い」というコンセプトが適用しにくくなった。当然、海外展開にもブレーキがかかり、2000年から2002年にかけて7店舗を閉鎖した。

海外戦略の見直し

 そうした混乱期に社長に就任した松井氏は、大掛かりな経営改革を断行する。海外戦略については、これまでのように単に外国語が話せるということではなく、販売部門で優秀な人材を海外店舗に送り込むようにした。当初は社内で反発があったが、成果を出すことで次第にもめごとはなくなった。出店計画も見直した。今までは同じ地域であっても矢継ぎ早に出店していたが、1つ1つ黒字化してから次の店舗をつくるようにした。「その土地の地価などを考慮し、計画的に出店できるようになった」と松井氏は話す。その結果、2002年に海外事業で初の黒字化を達成すると、右肩上がりに利益を伸ばしていった。

 「今後2年間で新たに約80店舗を海外にオープンする予定だ。2010年度には海外売上高で(総売り上げの2割に当たる)400億円を実現したい」(松井氏)

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