リーダーと部下が共に変革する方法:問われるコーチング力(2/2 ページ)
リーダーが行動を変えるためには、部下からさまざまな意見や指摘を受けることが必要である。これは部下にとってもメリットがあるのだという。
リーダーだけでなく部下をも変える
部下からフィードバックをもらう方法はいろいろある。例えば、このコラムで何度かお話したリーダーが陥りやすい「20の悪癖」を活用する方法をお勧めしたい。リストを渡し、それにチェックしてもらうのである。部下に頼むのが気恥ずかしいと感じるかもしれない。部下も何かウラがあるのではないか、はっきり言うと自分の評価が下げられるのではないかと思い、本音を言わない部下が出てくるかもしれない。そうなると意味がない。「自分の行動を変えたいと思っている。だから率直に意見を言ってほしい」、「自分は成長したいと考えている。どんなアドバイスでも聞く準備はできている」と最初に伝えることが肝心である。
自分が変わりたい、学びたいと思っているリーダーに対しては、部下はとても協力的にフィードバックをくれる。部下がどんなことを言おうと、それには「ありがとう」と言い、真摯に受け止め、思い当たるのであれば、変えるように心掛けて欲しい。
リーダーが部下からフィードバックをもらうことは、リーダー自身だけでなく部下にも良い影響を及ぼす。リーダーの改善点について考えることで、リーダーに関心を持つようになり、率直に話し合う場を通して、リーダーとの信頼関係が深まっていく。同時に「リーダーが変わろうとしているのに、自分はどうだろうか?」と自分自身のことを振り返るようになるのである。
バッドサイクルとグッドサイクル
ここで「組織の成功循環モデル」について少しお話ししたい。マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱していたもので、組織にはバッドサイクルとグッドサイクルがある。
現在は何よりもまず結果が求められる時代であり、短期の成果が高く評価される傾向が強い。しかし、なかなか成果が上がらず(結果の質の低下)、対立が生まれたり、押し付けや命令が横行する(関係の質の低下)。その結果、部下は面白くないと感じて、受身で聞くだけになり(思考の質の低下)、自発的・積極的に行動しなくなり(行動の質の低下)、それが関係の悪化につながっていく。これが悪い組織の典型的な姿であり、バッドサイクルという。
一方で、信頼関係が構築され、お互いに尊重し、一緒に考える風土が生まれると(関係の質の向上)、気付きが起こり、面白いと感じられるようになる(思考の質の向上)。すると部下は、自分で考え、自発的に行動するようになり(行動の質の向上)、結果として望むような成果が得られ(結果の質の向上)、さらに信頼関係が深まっていくことになる。これが良い組織の典型的な姿、グッドサイクルである。
リーダーが自ら変わりたいと伝え、部下からフィードバックをもらうことは、自身の行動変革につながるとともに、お互いの信頼関係を深め、関係の質を向上させる。これは、組織にとってグッドサイクルに入る、とてもいいチャンスなのである。
東国原知事の言動を見て、自分が自身を見る目と他人が自分を見る目は異なるということを改めて認識した。それを踏まえて、リーダーは自己変革するために部下からのフィードバックを受けることから始めてほしい。自分だけでなく、部下にも、そして組織にも必ずや良い影響が出るはずである。
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著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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