北朝鮮に向かう列車の中で……:「世界一蹴の旅」からすべて教わった(2/2 ページ)
国境を越えるべきか否か――。さんざん悩みぬいた結果、われわれは中国遼寧省の丹東から北朝鮮の首都・平壌への列車に乗り込んだのだった。
「日本語は人生の財産」
小一時間、一緒にお酒を飲みながら語り合った中で感じ取れた彼らの考え方や価値観は、元々描いていた北朝鮮の閉鎖的なイメージとはかけ離れており、至極真っ当なものだった。
この印象を決定付けた会話のやり取りを紹介する。
「なぜあなたは大学の専攻で日本語を選択したのですか?」
「隣の国の人と会話できるというのは、人生の財産だと思うのですよね」
そもそも彼自身は中国に行き来できる身分なので、北朝鮮人の中でも比較的グローバルな視点を持った人であることは確かだが、それにしても「日本語は人生の財産」という言葉が北朝鮮人の口から聞けるとは思いもしなかった。北朝鮮人に対してすごくネガティブな先入観を抱いていた自分を恥じた。
世界で最も謎めいた国、北朝鮮。このツアーでベールをすべてはがすことができたとは到底言えないが、北朝鮮の一般市民の思いに触れられたのはとても貴重な経験だった。僕にとっての旅の醍醐味は、現地にて肌で感じ取った体験を通して、事前に張っていたレッテルを自分自身の手ではがしていくことである。今回もまた北朝鮮に対する偏った先入観を自らの手で粉砕することができた。これだから旅は面白い。
これからも現地で生活する人々と触れ合える機会を大切にしながら世界を旅していこうと改めて心に誓った。(著者:アシシ/Libero)
著者プロフィール
アシシ(左)とヨモケン
アシシ:1977年生まれ、北海道出身。大学卒業後、外資系コンサルティングファームに入社。6年勤めた後、ドイツワールドカップ現地観戦を理由に退職。その後、中田英寿の影響を受け旅人デビュー。半年仕事、半年旅人のライフスタイルも2009年で4年目に突入。自遊人布教活動を推し進める血気盛んな31歳。
ヨモケン:1979年生まれ、神奈川県出身。1998年、大学入学直後に日本代表とともに初めてワールドカップ(フランス大会)を体験。2002年、日韓ワールドカップをEnjoyし尽くして、同年、外資系コンサルティングファームに入社。2006年のドイツワールドカップを現地観戦後、同社の中国オフィスへ転籍。人生のマイルストーンをワールドカップイヤーに重ねながら、現在はフリーランスのコンサルタント兼旅人を満喫中。
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