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バッテリー交換式EVをタクシーにという挑戦――ベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(3/3 ページ)

新たなうねりを生み出している電気自動車(EV)業界。環境のためにもEVの市場をつくり出すという藤井社長の戦略とは。

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藤井さんの先見性と悩み

 EV産業の黎明期、技術もやり方もさまざまです。その中で、藤井さんはEVをタクシーに導入することが市場を創ると考えています。携帯電話の市場が自動車の移動体通信から始まったように、起爆剤となるのが、EV市場ではタクシーではないかと思っているのです。この発想に、国内外の自治体関係者も関心を寄せています。環境と観光を融合したい都市はベタープレイスのソリューションに興味を持っています。

 ベタープレイスは、携帯電話産業の黎明期に基地局を造っているような存在です。すると、実証試験を終えて最終形にもっていくためには、携帯電話にあたるEVのメーカーとの提携が欠かせません。そこである1つの問題が発生しています。EVの開発には日本よりも中国が積極的なことです。政府の莫大な補助金により、中国ではハイブリッドを超えて一気にEVへの移行が進んでいます。

 固定電話がないために一挙に携帯電話が普及したのと同じ事情です。EVを造る技術を得るために、日本のエンジニアの引き抜きが盛んなのだそうです。日本は、環境、ガソリン車、ハイブリッド車、EVの技術が一番進んでいるにも関わらず、EVがまだあまり浸透していません。自動車大手はさまざまな事情を抱えながら、一挙にかじ取りができない状況です。イスラエルやデンマークでベタープレイスが参画するプロジェクトではEVの供給はルノーが担当していますが、東京のタクシーが中国製だと悲しい。持っている技術はすべてオープンにする、責任を持てる日本の自動車大手が積極的に参加して欲しいというのが藤井さんの熱い願いです。

創造することをこれほど体現している人がいるだろうか?

 そんな藤井さんに、個人としての嗜好を聞いてみました。新しいものをつくるのが好き。ルーチンよりも今までにないものをつくっていくのに喜びを感じます。灘高校、東京大学法学部、ハーバードビジネススクールでMBAを取得、日本と世界の最高学府で学び、華やかな職歴の中では、常に新しい創造という挑戦がついてきました。経営コンサルティングという、アドバイスに対してお金を払う文化がなかった日本で、マッキンゼーに勤め、M&A黎明期に投資銀行に勤務し、ソフトウェアで標準化する概念のなかった日本において、SAPやケーデンスで代表を務める。

 日本企業が、気付いていないところで、大きなうねりを創り続けたいとの思いがベタープレイスでの挑戦になっています。

著者プロフィール

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)

ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO

ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。


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