焦る気持ちと覚悟の笑顔:ヘッドハンターの視点(2/2 ページ)
職務経歴に空白期間があることはプラスに捉えられることはあまりありませんが、すべてのケースでマイナスとされるわけではありません。
大手IT企業A社で早期退職パッケージをとったBさんは、退職が決まると手当たり次第に経歴書を送って、最初に決まったITベンチャー企業C社に転職しました。ところが、2か月ほど経った頃「この会社は僕に合わない」と言ってあっさりC社を辞めてしまいました。Bさんはまたあちこち応募すれば次もすぐ決まると考えていましたが、一度経歴書を送って不採用になった場合(採用要件が変わったとしても)理由はどうあれ一定期間は再応募を受け付けないルールを設けている企業もあり、前回手当たり次第経歴書を送ったことが大きなネックになりました。また、なんとか書類選考を通っても、A社は「早期退職パッケージをとった」という業界内の人であれば「あぁ、あの時はどこも大変でしたからね」と言ってスルーされる退職理由がありましたが、C社の退職理由は「合わなかったから」しかも2か月。これは「うちに来ても同じじゃない?」ということで、さらに転職を困難にし、Bさんからは笑顔が消えていきました。
早期退職パッケージがでて相談に来たDさんは数日後に「家族とも相談して、半年間は転職先が決まらなくてもいいという覚悟ができました。転職活動は続けますがこれまで20年間仕事人間だったので、この機会に家族との時間を持ちたいと思います」と連絡をくれました。3か月後、Dさんに様子を伺うと「時々お話をもらうので面接に行ったりしていますが、まだ決まっていません。今は家族との時間がとれてとてもよかったと思っています。実際あのままだったら僕はきっと熟年離婚されていたと思います。今は妻に感謝しています」と明るく話してくれました。数か月後にDさんは中堅IT企業E社に転職が決まりました。半年間のブランクに関しても採用担当者は「とてもいい充電期間だったようですね。面接でお会いするたびに明るいDさんの笑顔にわたしまで元気をもらいましたよ」と言っていたそうです。E社に入社した年にDさんはとても大きなプロジェクトを獲得し表彰されました。
甘っちょろいと思う人もいるでしょうが、“笑顔”の人はそうでない人よりも採用される可能性が高いことは、採用現場でわたしが見てきた紛れもない事実です。“笑顔”には力があります。つらいとき、“笑顔”になんかなれないという人もいるかもしれません。だとしたら、とりあえず口角を思いっきり上げて、目を細めて、鏡をのぞいてみてください。その顔を見たらきっと笑えますから。
著者プロフィール
岩本香織(いわもと かおり)
USの大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネージャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリー(KFI)入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年KFI復帰、テクノロジーチーム日本代表。2002年〜2006年テクノロジーチームAsia/Pacific代表兼務。2010年8月KFI退職。2010年9月より現職。
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