現場のマネジャーに贈る! 行動科学マネジメントの教科書:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
なぜ部下は育たないのか、を解決する。大企業も小企業も、性別や能力、意志、やる気に関係なく部下育成ができる。どんな部下でも結果を出させるための方法があった。
行動科学マネジメントの理論に出会ったのは、そんな時だった。廃業を考えるほど追い詰められていたわたしは、最後のチャンスのつもりで単身米国へ。そこで「行動に焦点を当てる」という明確な理論に触れ、目からうろこが落ちる思いがした。帰国と同時に自社のマネジメントとして導入し、残った社員たちとともにいちから出直した。その結果、5年間で事業規模を10倍に拡大するという期待以上の効果が実現できたのだ。そして米国の理論の基本を踏まえつつ、同時に日本向けの手法にアレンジし、日本における行動科学マネジメントを確立した。
さて、90年代のバブル崩壊以降、日本の多くの大企業で台頭した仕組みが「成果主義」だったことを思い出してほしい。徹底した「歩合制」は社員のモチベーションを刺激したが、生産性が高まったのは一握りの「優秀な」社員だけ。優秀な社員は華々しい成果を上げて、収入も上積みされていった。しかし、誰もがそんな成果を上げられるものではなく、平均以下の社員のモチベーションは下がってしまい、今なおその傾向は残っている。
ビジネス界でよく言われる「2割8割の法則」を知っているだろうか。組織のメンバーを実力面から分析した際、トップ社員は全体の約2割。全体の6割が平均の社員、残りの2割が平均以下の社員になる。2割の社員だけが評価され、残りは自分が評価される機会がないことに気付き、反対に行動自発率を下げてしまったら、結果として会社としての生産性が高まるはずはない。
ただ、何もしないで8割を「できない社員」と決め付けるのは大きな間違い。「できない社員」は「できる社員」に変えればいい話。つまり社員がいつまでたっても「できない」のは、リーダーやマネジャーにも責任の一端がある。
では、できない社員はどのように変えていけばいいのか。まずは社員の「人格」と「行動」を分けて考えること。仕事ができなかったからといって、すぐ人事異動させるのではなく、部下の「行動」を変えさせる。正しい行動さえ教えてあげれば、どんな社員も必ずできるようになる。そして自ら進んで行動し、着実に成果を上げ、働くことに喜びを見出すようになる。わたしはこの方法で、自社の社員全員を「できる社員」に変えた。
すべての結果は行動の集積。この事実に基づいて、良い行動を増やし、悪い行動を減らすのが行動科学マネジメントである。優秀なマネジャーとは、部下に「良い結果を出せ」と言うのではなく、「良い結果を出させる、良い行動」を取らせることのできる人、つまり具体的な「行動の指示」が出せる人だ。
最後に、おかげさまで今まで、このメソッドを伝える著書を30冊ほど発行し、ビジネス誌や女性誌といった各ジャンルの雑誌からの取材や連載、執筆は相次いでいる。また全国各地の企業様を相手にした組織づくり・マネジメントの研修や講演などでも、評価をもらっている。その魅力は、どこにあるのか。
やはり1つは、行動科学マネジメントの「科学」がポイント。科学には、「実現再現性」と「検証性」が絶対に必要になり、簡単にいえば「いつ、どこで、誰がやっても同じ効果が得られる」もので、しかも「誰が見ても明らかなもの」ということがビジネスの現場においても、高い評価を得ている理由だと実感している。繰り返しになるが、性格も精神力も、時間も年齢も関係ない。本書「行動科学マネジメント入門」が悩めるマネジャーの一助になれば幸いだ。
著者プロフィール:石田 淳
行動科学(分析)マネジメントの第一人者。アメリカのビジネス界で大きな成果を上げる行動分析、行動心理を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ、「行動科学マネジメント」として展開。精神論とは一切関係なく、行動に焦点をあてる科学的で実用的な手法は、企業経営者などから支持を集める。
組織活性化に悩む企業のコンサルティングをはじめ、セミナーや社内研修なども行い、ビジネス・教育の現場で活躍している。趣味はトライアスロンとマラソン。2012年4月、世界一過酷なマラソンといわれるサハラ砂漠250キロメートルマラソンに挑戦、完走を果たす。
『教える技術』(かんき出版)、『組織行動セーフティマネジメント』(ダイヤモンド社)、『組織が大きく変わる最高の報酬』(日本能率協会マネジメントセンター)、『挫けない力』(共著・清流出版)など著書多数。
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