好かれる人が無意識にしている言葉の選び方:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
一流のリーダーは、一流の詩人。詩人とは、適切な言葉を選べる人。言葉の使い方で、好かれる人と、そうでない人とに分かれる。
「どういう言葉であいさつすればいいですか」という質問が、よくあります。あいさつは要りません。名前を呼ぶだけで、リスペクトされるのです。
「もしもし」より、「○○さん、こんにちは」
メール時代になって以来、電話で話すのが苦手な人が増えています。部下だけでなく、リーダーも、例外ではありません。
安藤忠雄事務所では、クライアントさんとの連絡は、メール禁止だそうです。必ず、口頭で言うことが、大事なのです。
電話では、一言目で、勝負がつきます。電話が日本に登場して以来、電話に出るときの言葉は、ずっと「もしもし」です。今は電話機が発達しています。誰からかかってきたか、表示で分かるようになっています。
普通の人は、「もしもし」と言って出ます。一流のリーダーは、「ああ、○○さん、何?」と言って出ます。その方が早いし、相手もうれしいのです。
しかも、今は1人1台電話を持っている時代です。電話をかけた人が、わざわざ「○○です」と名乗るのはおかしいのです。電話をかけた側としては、誰が出たか不安です。好かれる人は、「○○さん、△△(自分の名前)です。こんにちは」をノンブレスでスッと出る習慣をつけています。
これは頭で考えていてもダメです。習慣で選べるのが言葉の選び方です。まずは正解を知って、次はそれを何回も何回も使ってみます。他のことを考えていても、忙しくても、スッと名前が口から出てくるようにしておくのです。
頭で分かっていても、できるとは限りません。普段からの習慣で、慣れていないとできないことなのです。
「おいしいです」より、「これ、タイプです」
例えば、クライアントからレストランに招待されました。そういうときに、普通の人は「おいしいです」と言います。
これは間違っていません。間違っていないから、難しいのです。それ以上の言葉を考えようとしなくなるからです。間違っていないことを言っても、ただ嫌われないだけです。好かれるまではいきません。
好かれる人は、「これ、タイプです」と言います。「タイプ」は「好き」の変化形です。同じお菓子でも、各自に好みがあります。
「お口に合いますでしょうか」は、おいしいかどうかを聞いているわけではありません。相手の好みに合っているかどうかを聞いているのです。
「おいしい」は、便利に使える言葉です。ただし、グルメレポートでは使ってはいけない言葉になります。おいしいのは当たり前だからです。グルメレポートで「おいしい」と言ったら、次から仕事は来なくなります。
「おいしい」を、いかに別の言葉に言いかえるかです。「お口に合いますか」と聞かれて、「大丈夫です」と言うのは×です。
例えば、女性の部下がお弁当を作ってきてくれました。それを食べた後に「お口に合いますか」と聞かれて、「大丈夫」や「平気」と言う人がいます。本人の中では、×だと気付いていません。相手は心の中で「そんな言い方はないでしょう。最低」と思っていますが、口には出しません。そこが難しいのです。
食べた人は内心、「おいしい」と思っています。イマイチだったから、「食べられないことはない」という意味で「大丈夫」や「平気」と言っているわけではないのです。ここが怖いところです。
同じように「おいしい」と思っているのに、「大丈夫」と言う人、「おいしいです」と言う人、「タイプです」と言う人とに分かれるのです。
ボキャブラリーが少ないから、「大丈夫」というぶっきらぼうな言い方になっているだけというのは、親子なら分かります。会社の同僚レベルにそれを期待するのはムリです「最低の人」と思われて、「どうせまずいと思われているなら」と、次からはもらえなくなります。
言葉の選び方一つで、その後の関係は、近づくどころか、どんどん離れていってしまうのです。
著者プロフィール:中谷彰宏・作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『好かれる人が無意識にしている言葉の選び方』(すばる舎リンケージ)など、1000冊を超す。
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