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世界を切り開くのは言葉であるビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

これまでビジネスで重要視されていたのは、数字だ。しかしベクトルが定まっていないこれからの時代、自分の欲望を、誰もが望む未来を「言葉」にできた人が総取りできる。

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 そして、こんな状況はどの業界にもあるだろう。「なぜこうしたいのか」と問われ、「いえ、それは……」としどろもどろになった経験を持つ人は少なくないはずだ。しかし、それについて文句を言ってはいけない。大きな仕事になればなるほど、それだけ多くのお金や、たくさんの人の時間がかかっている。だからこそ理由を聞かれたら、言葉できちんと説明しないといけないのだ。

 例えば上司に「なぜ、このお店でこの商品を優先的に売っていこうと思ったんだ」と言われたときも、「なんとなく」で済ますのではなく、言葉にすべきだ。なぜそう思ったのか、直観を掘り下げ、記憶や感情をたどっていこう。「似たような商圏のお店で、似たような他社商品が売れていた記憶があるから」「パッケージの感じが、お店のデザインと合っていて映えそうだったため、お客さんが手に取ってくれそうに思えたから」

 人生の経験や過去の記憶をフル稼働して何か見つかったら、口に出してしまえばいい。データ整理はそれから。そもそもデータ分析だって、先に「あたり」がなければ、膨大に時間がかかるだけだ。

 言語化の訓練を積んでいくと、瞬時に答えを導き出せる運動神経のような「直観」が身につく。ある事象を見て、パッと「こういうこと」と言い当てられるようになる。もちろん、そういった直観はものすごく大切だ。そして経験上、ほぼ「直観が答え」である。余計な理屈がない分、ピュアに事態の本質を捉えていることが多い、言語化できないからこそ直観は強いし、正しい。

 ただ、ビジネスの現場で「直観です」と言っても、よほどの天才や巨匠ではない限り、周りには納得してもらえない。直観というのはこれまでの人生で経験してきたさまざまな価値判断の集積であり、脳を総動員させて最速で出した結論。その人の過去の経験をあらゆる角度から見て判断したものだ。その「直観」という脳の判断に言語を追い付かせる必要がある。周りに説明するために言語を後付けしていく作業が必要なのだ。

 「直観は直観だから、しょうがないだろ」と言ってはいけない。

 直観は言葉にできる。そう信じることから始めよう。そして、直観を言葉にする努力こそが「ビジネス」でもある。言葉にすることでハンコをもらったり、再現可能性を作ったりする。「言葉にできない」を言葉にするから、お金をもらえる。もちろん感動することがいちばん大切だが、そこから先の「言葉にするための努力」を放棄したら、それは思考の怠慢である。

 情報の断片を積み重ねて論理を作る。それこそがビジネスであり、お金になるプロセスなのである。

著者プロフィール:三浦崇宏(みうら たかひろ)

The Breakthrough Company GO代表・PR/クリエイティブディレクター。

博報堂・TBWA HAKUHODOを経て2017年独立。博報堂では、マーケティング、PR、クリエイティブ部門を歴任。PR戦略を組み込んだクリエイティブを数多く手掛ける。現在は、さまざまな業種のプロフェッショナルを集め、新規事業開発から広告まで幅広く問題解決を手掛けるThe Breakthrough Company GOを設立。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで金賞、ACC総務大臣賞ほか受賞。雑誌「ブレーン」にて「2019年注目のクリエイター」に選出される。


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