コロナ禍を乗り越える2つの観点:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
全国で稼げる地域づくりを手伝っているが、コロナの影響で応援していた地域が大きなダメージを受けている。誰にとっても非常につらい半年ではあったが、今後の地域ブランディングにおいて、いくつか大事な観点があると感じている。
たった半年で、ここまで変わるのかという点は非常に驚きも多い。ただ、それはコロナというリトマス試験紙が、本物のリーダーを浮き彫りにしてくれたにすぎないと感じている。その事業領域・地域をよくしたいという強い信念があるリーダーは言い訳せずに、その信念を突き通しているだけかもしれない。だからこそホンモノでもあり、今後をけん引していくのは確実だと感じている。
もう1つの観点が(2)の「共感ファンづくり」である。先述の強い信念があれば、ぶれない芯というものが確立されている。ホンモノのリーダーの活動には大義名分やビジョンがあり、そこが魅力的であるからこそ多くの人々の共感を呼び、ファンを拡大させ、そのファンが支えてくれる流れを作っている。
例えば、コロナ禍で今まで以上に盛んになったものの一つにクラウドファンディングがあげられるだろう。クラウドファンディングにおいての成功要素は、その活動自体への共感である。主催者にどんな背景があり、どんな思いでこれまで活動をしてきたか、コロナ禍でどんな状況に直面し、それをどう乗り越えて、どんな世界を作り上げようとしているのかが大事である。応援している人も、短絡的なリターンへのお得感ではなく、応援したことで得られる人と人のつながりというものを大事にしている。
コロナ禍の時代において、誰もがつらい状況に置かれたがゆえに、人生の本質とは何かということに向き合える時間にもなり、多くの人がより人生の本質に向き合っているようにも感じている。だからこそ、より共感が選択の大事な基準として加速しているのだろう。
コロナ前からSDGsは大事なキーワードになっていたが、Afterコロナの世界はSDGsを含めたバックボーンの共感性がさらに増していくのではないだろうか。その共感をいかに作れるかという点も非常に大事になってきている。そして、そのつながりをリテンション(関係維持)できてくると、事業の安定基盤につながると確信している。
コロナの影響で強制的にオンライン化が進んだこともあり、直接会わずに遠隔でもつながりを感じることができる時代に変わってきている。顧客は、より広い世界を経験できるようにもなってきているので「共感ファンづくり」の観点で事業設計できたリーダーは、次の事業展開ができるようになるだろう。
さて、私は『リクルートOBのすごいまちづくり』において、「地域ブランディング そのまちらしいコト消費で稼ぐ〜国際競争の中で、地域の伝統・風土を外貨獲得手段に〜」の章を執筆させてもらった。モノからコトへの消費者マインドの変化の中で、地域におけるコンテンツに物語性や演出といったことでプログラム化させて、もっと稼げるモデルにしていく必要があることなどを伝えている。
特にインバウンドにおいて、欧米豪の消費者はホンモノ志向が強く、とってつけたようなニセモノだとすぐに見抜かれてしまい、持続しない。きちんと地域のアイデンティティーを大事にして、地域の人が大事にしている生活そのものに触れ合える体験に対する需要が世界的に高まっている。それらはSDGsという価値観が世界的に一気に広がり、一定の費用を払ってでも体験したい顧客が世界にたくさんおり、それが主流になってきていることなどをまとめている。
コロナの影響でインバウンドはほぼゼロに近いところに至ってしまい、非常に苦しい思いをしている人も多いのが事実である。ただし、地域の思いを紡ぎそれを企画にしてきた商品は、先述の共感で国内外のファンが応援してくれる商品に進化して、新たな顧客を創出できるモデルに転化できたものも数多くみてきた。まだまだつらい状況は続くが、チャレンジ精神をもって、共感ファンづくりをすることで、新たな時代のリーダーとなってくれることを願っている。
著者プロフィール:吉田博詞
地域ブランディング研究所 代表取締役
広島県廿日市市出身。?リクルート等を経て、2013年?地域ブランディング研究所設立。東京浅草や広島を拠点に地域に眠る魅力的な資源を発掘して、プレミアムな商品づくりを応援し、世界のマーケット・販路とつなぐプラットフォームAttractive JAPANを展開。持続的に稼げる地域づくりを応援すべく、地域の受入環境組織づくりや人材育成も展開。
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