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「フードテック」攻略の鍵はサステナビリティと価値観の多様化(2/2 ページ)

「フード(=食)」と「テクノロジー」を掛け合わせたフードテック分野への投資が、近年活発化してきている。フードテック躍進の背景には、食分野における2つのメガトレンドがドライバーとして作用している。

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Roland Berger
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 例を挙げると、「必要以上につくらない」ようにするためのブロックチェーンによる取引情報のトレース、「廃棄食品を減らす」ためのセンサーや特殊包装技術を用いた鮮度管理や保存、「余剰食品を有効活用」するための3Dプリンタを用いた余剰食品の活用技術、といった具合だ。欧米の大手食品メーカーや食品小売、外食産業はこれらテクノロジーを積極的に取り込んでいる。

多様な価値観に応える「体験価値向上」ツールとしてのフードテック

 生活者の価値観の多様化も、フードテックの出現・活用を後押ししている。

 そもそも、食に関する生活者の価値観は時代の変化とともに多様化してきた。もともとは「生きるための活動」という意味合いが強く、健康維持・増進が食の主目的であった。それが時代とともに「おいしさ」や「食の安全」に対する意識の高まり、直近では「ライフスタイルの表現」や「人とのつながりの手段」といった意味合いも重要となった。結果、一人一人の食に対する価値観・嗜好性はますます広がりを見せてきている。


生活者の価値観・嗜好性はますます多様化しており、一人一人がストレスなく食生活を楽しめる配慮が求められている

 それと呼応する形で、飲料・食品メーカー、食品小売、外食といった食品関連事業者は「パーソナライゼーション」を強化してきた。つまり、多様化する消費者に対応できるよう、一人一人にあった食を提案しようとする動きだ。さまざまなパーソナライゼーション関連サービスも誕生。欧米の大手企業のフードテックへの取り組みも目立っている。


食のパーソナライゼーション市場にはさまざまなスタートアップが登場

欧米大企業も、スタートアップの買収・提携などを通じて生活者との接点を増やし、おのおののパーソナライゼーションにつなげている

 興味深いのは、昨今では「食の楽しみの多様化」は物理的な食事・空間にとどまらないという点だ。「エンターテインメントとしての食」はデジタル空間まで広がりを見せており、VR空間上の体験に即した「香り」が出るデバイスなど、デジタル空間に食体験をかけ合わせた事業も登場してきている。

フードテックの取り込みに向けて

 以上で見てきたように、サステナビリティに関する要請への対応や、多様化する顧客へのパーソナライゼーションを目的とするフードテックは、今後も広がりを見せる可能性が高い。食産業(飲料・食品メーカー、食品小売、外食など)のみならず、消費財、ヘルスケア、化学・素材、テクノロジーなどの周辺業界にとってもフードテックは間違いなく注視すべき分野の1つだ。

 ただし、戦略なく「出玉に飛びつく」ことは避けたい。自社として目指す事業領域・ターゲット・提供価値を描いた上で、どこまで自前で・どこまで外部活用するのかといったオープン・クローズの見極めと共に、具体的な投資対象を検討されてはどうか。

著者プロフィール

染谷将人(Masato Someya)

ローランド・ベルガー シニアプロジェクトマネージャー / 東京オフィス

東京大学理学部物理学科、同大学院理学系研究科物理学専攻修了。メディア・エンターテインメント、消費財・小売り、食品・飲料、サステナビリティを中心とした領域において、さまざまな戦略プロジェクトを手掛ける。東京オフィスの消費財・流通プラクティス、エンターテインメント・プラクティスのコアメンバー。


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