「部下が発言しない会議」は上司に責任がある:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
会議で活発な議論を交わして欲しいと思っているのに、参加者からほとんど発言がない。こうした場合「やる気がない!」と部下のせいにしてしまいがちだが、実は上司の側に原因があることが多いようだ。
「アイデア出し会議なのに人の意見を否定する人」が現れないようにするには、会議の開催にあたって、ファシリテーター(仕切り役)が、「今日の会議はアイデア出しが目的です。ゴールは決定ではなくてアイデアの量ですので、みなさん、出た意見を否定するのはNGでお願いします」と宣言することです。
最初に宣言してしまえば、参加者の心理的なハードルも下がります。
発言内容よりも「顔」が問題になっている
もしも「私は否定的な意見を言わないのに、会議がお通夜みたいだ」と思う方がいれば次のようなケースかもしれません。想像してみてください。
会議室のど真ん中にデーンと座った上司が、眉間にシワを寄せて、腕組みをして、会議の参加者ににらみを利かせていたら、どうですか?
その無言のプレッシャーの中で、あなたは意見を言うことができますか? 不機嫌そうな顔をした年配者が、参加者の1人として存在しているだけでも、会議時間が長くなるというデータがあるのです。
もっとも、上司自身は怖い顔をしているなんて意識はありません。あくまで、普通に座っているつもりなのです。しかし、人間の顔は年齢を経ると、筋肉の衰えに伴い自然に口角が下がりがちになります。これは誰にでも起きる現象なので、意識してフェイスマッサージをしているか、常に笑っている陽気なタイプのキャラでもないかぎり、ある程度仕方がないことなのです。
しかし、部下にはそんなことは分かりません。上司が口角を下げて、ひと言もしゃべらずに腕組みなんてしていたら、会議の雰囲気はもう最悪。
「ヘタに発言すると怒られるのではないか」という妄想によって、参加者は委縮してしまいます。まるでギリシャ神話のメデューサににらまれて石になったように、参加者は発言しなくなります。まるで「メデューサ上司」です。
どうしてそんな妄想をしてしまうのかというと、「心理的安全性」(何を発言しても安全だという心理状態)が確保できていないのが原因です。いくら見た目が怖い顔でも、内面は優しいということが分かっていればプレッシャーはかかりません。
しかし、人の内面は目には見えないものです。会議の参加者全員と「心理的安全性」を確保するのは、なかなか難しいでしょう
口角上げようキャンペーンが効果的
上司本人だって、まさか自分の顔が、会議の発言者を減らしているとは認識していないものです。簡単な解決策は、上司に口角を上げてもらい、笑顔になってもらうこと。とはいえ、急に笑顔になれと言われても、なかなか難しいものです。
オススメなのがキャンペーン化すること。
私は実際に、複数の大手企業において、「40歳以上の男性は口角を上げようキャンーン」を実際に行ってもらいました。その結果、たった2カ月のトライアルで、会議時間が約1割(8%)も短くなりました。協力してくれた企業の方も驚いていましたが、「心理的安全性」はそれだけ大事ということです。
もし、あなたが1人でも部下を持つ立場であったり、後輩をリードする先輩の立ち位置であるなら、ぜひ、この話を参考にしてください。口角を上げるように気を付けるだけで、部下や後輩の心理的安全性も確保されますから、部署やチームの人間関係も良好になるでしょう。
著者プロフィール:越川慎司(こしかわ しんじ)
日本電信電話株式会社(現NTT)、ITベンチャーの起業などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者などを歴任。2017年に業務改善コンサルティング会社「株式会社クロスリバー」を起業。
のべ800社以上、17万人を超えるビジネスパーソンの効率アップを支援。日常業務にひそむ「名もなきムダ仕事」の撲滅に注力する。
「株式会社クロスリバー」では、メンバー全員が週休3日・週30時間労働を継続。
著書に『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『科学的に正しいずるい資料作成術』(かんき出版)、『29歳の教科書』(プレジデント)、『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』(アスコム)ほか多数。
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