かわいい子には旅(越境)をさせよ!:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
主に今の自分のキャリアを巡る「もやもや」を何とかしたいと思っている人が、その「もやもや」にどう対処し、どう突破するのかを、越境をヒントに解き明かしていく。
この過程で、私自身が、個人内越境、企業内越境、企業間越境、職種間越境を実践してきました。さまざまな業種の顧客に営業をしてきたため、疑似的な業種間越境も行っています。また、経済産業省などの中央官庁との共同事業を幾つか実施し、部分的産官越境も経験しました。大学で講義を受け持ったこともありますので、産学越境もやりました。今行なっているプロジェクトは20代から60代のメンバーが集まっているため、世代間越境でもありますし、バーチャルですが国家間越境も体験しています。
自分は入社以来ずっと会社員として仕事をしてきました。最初は、言われることをひたすらやっていれば楽しかった。しかし、時間がたつと上述したような「もやもや」が生じてきました。「もうもや」を突破するために、自律的・自発的・能動的に越境してきました。その結果、然るべきパフォーマンスをあげることができたと思います。越境が今の自分を形づくったといえます。
かわいい子には旅(越境)をさせよ
経営者の観点で見ると、越境とはすなわち、「かわいいい子には旅をさせよ」です。「かわいいい子はたこつぼに入っていてください」という日本企業がとても多い印象があります。それでは、この時代を生きる人たちのポテンシャルが最大化されない気がします。
令和元年6月21日付けの政府の『成長戦略実行計画』に以下の記載があります。
組織の中に閉じ込められ、固定されている人を解放して、異なる世界で試合をする機会が与えられるよう、 真の意味での流動性を高め、個人が組織に縛られ過ぎず、自由に個性を発揮しながら、付加価値の高い仕事が出来る、新たな価値創造社会を実現する必要がある。
政府も越境を促進しようとしているのです。副業・兼業促進もその流れでしょう。
経営者からすると、「社員が越境して、隣の芝生が青く見えて、転職されたら堪らない」という危惧はあろうかと思います。それは杞憂(きゆう)です。越境すると、越境先での出来事と今の自分との相対化が行われ、相対化返しともいうべき学びが得られ、自社への愛着的・変革的思考・態度が強化されるという調査結果が得られています。皆さんが経営者であれば、社員をどんどん越境させるべきです。
社員にとって、越境はいろいろと大変です。たこつぼの中に入ってぬるま湯に漬かっている方が安全で安心です。しかしながら、行動しない限り、越境しない限り、変化はつくれません。立脚点や居場所が変わらないと、「もやもや」を突破することはできません。ずっと「もやもや」したまま働く社員を望みますか? 逆に、越境すると、その強力な相対化力により、「変容的学習」、いわゆる変化による学びが実現するのです。そして強くなる。越境は社員のキャリア開発の基礎といってもいいでしょう。
かわいい子には、どんどん旅をさせるべきかと思います。旅とは越境です。経営者や人事の人であれば、社員の越境を促進することを強く勧めます。
著者プロフィール:著者プロフィール:井上 功(いのうえ こう)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
マスター/エグゼクティブ・プランナー
【略歴】1986年リクルート入社、自社の採用業務の後、顧客の採用支援、組織活性化業務に従事。2001年、HCソリューショングループの立ち上げを実施。以来11年間、リクルートで人と組織の領域のコンサルティングに携わる。2012年に現社に出向・転籍。2022年4月より現職。
【現在の仕事】
組織の中から新しい価値(イノベーション)をどうやって創出するか、をテーマに掲げ、経済産業省や民間企業、リクルートグループ各社と協働、イノベーション人材開発、組織開発、新規事業提案制度策定等に取り組む。近年は、異業種協働型の次世代リーダー開発基盤Jammin’を開発・運営し、フラッグシップ企業の人材開発とネットワーク化を行なう。
【表彰、講演実績・講演テーマ】
1997年、98年にリクルート全社マネージャMVP受賞。早稲田大学、国際基督教大学、国土交通省、経済産業省、日経新聞等 で講演実績多数。主なテーマは、1、イノベーション創出、2、越境、3、次世代リーダー開発、4、リクルートの企業変革。
【著書】
『借金1丁円を10年で返したリクルートの現場力』(2005年/ダイヤモンド社)、『なぜ「エリート社員」がリーダーになると、イノベーションは失敗するのか前』(2015年/ダイヤモンド社)、『次世代リーダーを育て、新規事業を生み出すリクルート流 イノベーション研修 全技法』(2017年/ディスカヴァー・トゥエンティワン社)
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