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経営から現場まで、「境界を越えてつながる」人材育成と組織風土変革がDX推進の鍵――旭化成 原田典明氏デジタル変革の旗手たち(2/2 ページ)

2016年よりデジタル技術を活用して400を超える現場の課題解決に取り組んできた旭化成グループ。多様な事業から生まれる「データ」と、それを活用する「人」を価値の源泉と捉え、グループの総合力を結集し、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の実現に向けたDX推進に取り組んでいる。旭化成グループのDX推進について、ITmediaエグゼクティブ プロデューサーの浅井英二が話を聞いた。

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 DEEPを活用することで、例えば合成ゴム・エラストマー製品におけるカーボンフットプリント(CFP)の可視化が可能になった。旭化成では、カーボンニュートラルの実現に向け、温室効果ガス排出量削減を進めているが、主要製品ごとのCFPの算定に必要な生産・購買データの連携などにDEEPを活用している。また自動車関連事業では、事業ごとに売上などの情報を集約、分析していたが、DEEPにより、各事業の経営環境を事業横断的に把握、多面的に分析できるダッシュボードを構築し、分析時間の削減と、業務効率化を実現している。

 原田氏は、「各事業部門が個別に持っているデータをオープンにし、それらを連携させることでグループ全体のデータ資産となり、誰でも容易に探索、連携、活用できるようになります。アカウントマネジャーは、その顧客に関する事業ごとの全ての情報を把握しておかなければならず、そのためにはデータが集まる仕組みが必要になります。DEEPは、データが事業や部門、会社の壁を越えることを具現化しています」と話す。DX-Challenge 10-10-100では、2024年度までにデジタルデータの活用量を2021年度比で10倍に増やす目標を掲げている。

旭化成のDXは「組織風土」の変革

 現在、旭化成では、マテリアル、住宅、ヘルスケアの領域で事業を展開している。この3つの事業領域は、創業から100年以上の歴史の中で、時代の変化に合わせて現在に至っており、ノウハウや人脈などの膨大な無形資産が蓄積されている。もちろんデータも蓄積されているが、最大の課題はデータが有機的につながっていないことだった。このデータをうまくつなげ、活用することで、事業を越えたシナジーを発揮できる状況を作ることを経営層は期待しているという。

 「データ活用が迅速かつより良い意思決定につながれば、事業ポートフォリオを変革していく原動力になるはずです。それは大きなチャレンジですが、それだけDXへの期待も大きくなっています」と原田氏。

 DXは多くの意味や期待が込められている。原田氏も、「DX推進では、Xの定義が重要」と話す。

 「3年前はデジタルツールを導入することに注力しており、Xを特に定義していませんでしたが、いま注力しているのは人財育成による組織風土変革です。組織を作っているのは人であり、人が変わることで風土も変わります。旭化成は製造業なので、人が工場というアセットを使ってモノづくりを行います。これをいかに変革してくかが、これからの旭化成におけるXの定義です」(原田氏)

聞き手プロフィール:浅井英二(あさいえいじ)

Windows 3.0が米国で発表された1990年、大手書店系出版社を経てソフトバンクに入社、「PCWEEK日本版」の創刊に携わり、1996年に同誌編集長に就任する。2000年からはグループのオンラインメディア企業であるソフトバンク・ジーディネット(現在のアイティメディア)に移り、エンタープライズ分野の編集長を務める。2007年には経営層向けの情報共有コミュニティーとして「ITmedia エグゼクティブ」を立ち上げ、編集長に就く。現在はITmedia エグゼクティブ プロデューサーを務める。


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