重要な経営課題を デジタルで解決するために――ビジネスアナリスト(BA)ならデジタルを活用した解決案を提案できる:ビジネスとITを繋ぐビジネスアナリシスを知ろう!(2/2 ページ)
日本企業が「重要な経営課題をデジタルで解決するために」どのような取り組みが必要かを考えてみたい。
4、では、どうすればデジタルを経営課題解決に使えるのか
(1)「空白」をうめる人材……「ビジネスアナリスト(BA)」
解決策は、問題を引き起こしている「空白」をうめることなのは明解だ。そして、「空白」をうめるためには、その空白で役割を果たす人材がまずは必要である。
それが「ビジネスアナリスト(BA)」。これらの空白をうめることができる能力を持つプロ人材を、グローバルでは「ビジネスアナリスト(BA)」と定義している。従って、このBAというプロ人材を日本企業にも導入することが最善の解決策と考える。
世界では、160カ国にBAの存在が確認されており、100〜200万人が活動しているという情報もある。(経済産業省 「デジタル時代の人材政策に関する検討会」資料より)
(2)「ビジネスアナリスト(BA)」の役割
基本的な役割は以下の通り。
- 経営の問題意識をベースに、現場の状況を分析する
- 問題を抽象化して考え、本質的な課題として整理する
- デジタルでの解決策を策定し、自社システムへの導入方法を描く
- 経営者、事業部門、現場、IT部門、などの関係者と調整し、成案を得る
- システムの要件を作成して、IT部門に伝え、ソフトウエアの開発に着手する
基本の役割は以上だが、空白のどこをうめるかによって特徴を持つ。
- 本社のコーポレート機能として、生産性などの課題を解決するタイプ
- 事業部門の中で、事業の最適化やデジタル化のシステム要件を設計するタイプ
- 顧客を中心に置いて、顧客と企業全体との最適化を図るタイプ
- ERPに関する専門知識を持ち、その効果的な導入・改善を図るタイプ
(3)「ビジネスアナリスト(BA)」が持つべき能力
上記の役割を実践するために、BAは以下のような能力が求められる。ビジネスとデジタルの両方を分析できるスキル、組織に流されないマインドセットを持つことが特長。
スキルは以下の通り。
- ビジネスの状況を深く分析し、本質的な課題を洗い出す能力
- デジタル技術の可能性と自社のシステム構造を深く理解する能力
- 意見が違う部門間を調整するコミュニケーション力
マインドセットは以下の通り。
- 業界の常識や社内の慣習などを捨てて、白紙の状態で本質を見抜くマインド
- 関係者の意見を忖度せずに、真に正しい解決案を提案するマインド
5、誰が責任を持ってBA制度を導入するのか
経営者、すなわち、社長かCIO(CDO)が覚悟と責任を持って導入する。導入時に検討するテーマが以下の通り。
- どの空白から埋めていくのかという戦略を策定
- BAというプロ人材の人事制度(ゼネラリストとは別に転勤しない)を策定
- BA人材の育成プランを策定(座学と実践の組み合わせ)
- デジタル化の社内プロセスを定め、BAの関与を義務付ける
デジタルだけですべてが解決できるわけではないが、日本企業もデジタルを活用することで、現状の課題と向き合い重要な経営課題を解決することができるはずである。このようなステップを踏みながら、取り組んでみてほしい。
著者プロフィール:横塚裕志
NPO CeFIL理事 DBIC共同代表、SMIC共同委員長
- 1973年 一橋大学商学部卒業後、東京海上火災保険へ入社
- 2004年東京海上日動火災保険IT企画部長
- 2007年東京海上日動火災保険常務取締役
- 2009年東京海上日動システムズ代表取締役社長
- 2014年CeFIL理事長
- 2015年情報サービス産業協会会長
- 2016年CeFIL内にDBIC立ち上げ
- 2021年FPTコーポレーション取締役
インフォテック取締役、日本疾病予測研究所取締役、 産業技術総合研究所研究評価委員会(情報・人間工学領域)委員長、 高崎商科大学アドバイザリーコミッティーメンバー、 富山大学非常勤講師なども務めた
寄稿:「日経コンピュータ」の連載「SEよ 大志を抱こう」2009年11月〜2013年4月
著書:2012年 「SEよ 大志を抱こう」日経BP社、2013年 「SEを極めるプロフェッショナル仕事術」日経BP社
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