3月はフォローアップの時期:ビジネスマンの悩み相談室
1年のうち、4分の1が過ぎたが年初に立てた目標を見直しているだろうか。計画通り進んでいない場合は、どのように改善すればいいか考えるのも重要である。
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3月も後半にさしかかっている。1年がスタートして3カ月、つまり1年のうち、4分の1が過ぎたことになる。年初に立てた目標を見直しているだろうか。今日はそのことについて話す。
<事例>
ある外資系消費財メーカーのG君は年初に次のような目標を立て、Z部長に報告していた。
- 新規の顧客を毎週3件はまわる
- お礼のはがきを月に5枚以上書く
- 英語の資格試験に合格するため、毎日30分以上勉強する
- 運動して5キロ減量する
Z部長は3月末が近づいているので、それらがどうなっているか、聞いてみた。
Z部長:G君、年初に立てた目標だけれど、どうなっている?
G君:いや、なかなか日々のことで忙しくて。
Z部長:「新規の顧客を毎週3件まわる」とあったけれど、これについてはどうだ?
G君:今抱えている案件が多くてなかなか行けていません。
Z部長:お礼のはがきを月に5枚以上書く件は?
G君:いやそれもなかなか時間がなくて。
Z部長:英語の資格試験の勉強はどう?
G君:日々の業務に追われていて。
Z部長:運動はどうだい?
G君:時間が取れていません。
Z部長:そうすると、何もできていないな。3カ月がたったし、見直してみようか。
G君:え、目標って途中で見直してもいいのですか?
PDCAを回せるか
ビジネスにおいて、PDCA(Plan, Do, Check, Act)をいかに回せるかが成功のカギになる。これはビジネスパーソンにも当てはまるものである。Planは案外簡単だが、それ以降がどうしてもおろそかになる傾向がある。特にCheckは継続して成果を残していくためには欠かせないのだが、行っていない人が多い。
今年1月に立てた計画は進んでいるだろうか。3月末はまさにPDCAのC、Checkの時期である。進捗しているか、計画通り進んでいないものは修正する必要がある。どう改善すればいいか、考えてみるのも重要である。
目標を立てるが、それを実行できない人が数多くいる。誰しも年の初めには多くの抱負や目標を掲げる。しかし、それが実行されないのはなぜだろうか。それはCheckをフォローする仕組みがないからである。立てた目標が実行されているか、それを確認していない人が大半なのである。
G君の場合、それが当てはまる。日々の忙しさにかまけて、年初に立てたことが実行できていない。Z部長はCheck、フォローアップをサポートする必要がある。
次のようなマトリックスを見たことがあるだろうか。
仕事を「緊急」「重要」の度合いによって分類している。それぞれ以下のように分類できる。
第1象限:緊急度が高いけれど、重要度が低い
第2象限:緊急度も低く、重要度も低い
第3象限:緊急度も高く、重要度も高い
第4象限:緊急度は低いけれど、重要度が高い
普段の仕事を考えると、やはり私たちは第3象限、つまり「緊急度も高くて重要度も高い」ことを優先しがちである。この仕事は日々必要なことであり、そのときの売上や成果に直結するのでやはり大切ではある。しかし、いつも緊急で重要なことばかりをこなしそれに忙殺されていると、自転車操業の状況になる。それでは人は成長しない。
今の状況を打破し成長するためには、第4象限つまり「緊急度は低いけれど、重要度が高い」仕事に取り組まなければいけない。例えば、
・1年後に固定のお客さまを今より3割増やすためにはどうしたらいいか
・○○の分野が伸びていくはずであり、その分野のエキスパートと呼ばれるようになるためにはどうしたらいいか
・将来○○の仕事をしたいので、今何をすべきか
このようなことは、日々の仕事に追われているときにはなかなか考えられない。あえてそういう時間を作らなければいけないのである。
サムスンとエルピーダの違い
サムスンとエルピーダの違い
話が少しそれるが、先日日本の電機メーカーの決算が相次いで発表され、どの企業も厳しい状況に置かれていることが浮き彫りになった。半導体メーカーのエルピーダは会社更生法を申請している。なぜこのような状況に陥ったのだろうか。
同じ業界でも、韓国のサムスン電子は厳しくはあるが健闘している。日本の企業が苦戦する中で、韓国の企業はなぜ健闘しているのか。これはぜひ分析すべきことである。
一つにはサムスンが投資の手を緩めなかったことがあるのではないだろうか。2008年のリーマンショックの影響は日本にしろ、韓国にしろ、多分に受けている。その際にどのような対応を取ったかが大きな分かれ目になったと思う。
サムスンは厳しい状況だが、投資を継続した。一方で、日本のメーカーは投資を縮小したのである。決めた戦略をフォローアップしながらいかに実行し続けられるか、これは今の時代に求められていると感じる。
エルピーダに関していえば、ステークホルダーが多すぎたともいえる。ステークホルダーが多すぎるとやはりぶれてしまうし、実行できなくなる。リーダーが周りの人の機嫌を伺うようになり、物事は進まなくなる。さまざまな人がいろいろなことを言うが、自身が決めたことをやる、やり遂げることがとても大切である。
自分たちのミッションは何なのか、やるべきことは何なのか。今、自分たちはどのような立ち位置にいるのか。自分たちの勝てる戦略は何か、何を持って勝つのか。卓越したリーダーは勝てる戦略を持っている。合議制、コンセンサスを取るのはやはりうまくいかない。
今はPDCAをしっかりと回し、自分が決めたことをやり抜いた企業が勝つのである。3月はビジネスパーソンもC、Checkをしっかりと行い、次のアクションを考え、行動する。そのとても大切な時期ではないだろうか。
著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。「ビジネスマンの悩み相談室」は電子書籍でも配信中。「自分は頑張っていると主張する部下に悩む上司」「ぬるい部下に悩む上司」「若い人には横から目線で共感する」(各250円)
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