間違いだらけのIT経営
安易に逃げるな、挑戦のチャンス(2/2 ページ)
システム切り替えが功を奏し、取引先が拡大
一方、大変参考になる好例もある。取引先とのシステム互換性に配慮したCAD/CAMなどのIT導入に成功した企業の例である。
岐阜県各務原市にある徳田工業は、自動車、航空業界向けの模型製作を主業務とする。取引先からCAD導入の依頼があり、1988年に3次元CADを導入した。これはワークステーションベースのシステムで、ハード、ソフトともに高価であり、同社の負担は大きかった。
その後パソコンの高性能化に伴って、1999年にパソコンベースのシステムに切り替えた。自動車や航空業界で利用されている3次元CADとデータ交換できるシステムである。初期投資は4000万円、保守費用は年間400万円程度、Bフレッツ利用で通信費は月5万円程度(従来は約70万円)だった。取引先と互換性のあるシステムにした結果、これまで間接取引しかなかったトヨタをはじめ多くの企業から、新たに直接取引の受注が入るようになったという(「財団法人 岐阜県産業経済振興センター」資料より)。
ここでの教訓は、(1)取引先とデータの互換性あるシステムにすることであり、(2)かなりの負担になっても投資を決定した徳田工業の英断であり、(3) その後の安価なパソコンシステムへの切り替えのタイミングなどが考えられる。
逃げずに立ち向かう精神を
次に、複数の顧客固有のフォーマット作成/変換に柔軟に対応するシステムを構築したカシオ計算機の例を紹介する。カシオでは、ERP(統合基幹業務システム)を利用した基幹システム再構築のプロジェクトを始める際、取引先とデータ交換するEDIシステムは切り離して再構築することになった。従来は、国内VANを経由して約200店(量販店)との受発注データをやり取りするシステムだった。VAN会社から受けたデータを社内システム用フォーマットに変換したり、取引先のフォーマットに変換してVAN会社に送信したりする処理を行っていた。
これを2006年、顧客の固有フォーマットの作成や変換、取引先変更などにも柔軟に対応できるシステムを構築した。連携するメインのERPシステムに遅れをとらないよう、思い切ったシステム導入に踏み切ったことがポイントである(参考サイト)。
最後に、豊田技研のシステム構築の事例を紹介する。同社は、取引先顧客からの要求に対応して、生産管理システム、Web利用のオンライン受注システム、ホームページ、社内LANを構築した。顧客5個所からWeb上の受注BOXに入ってくる不定期な受注を生産管理に連動させるシステムである。同社の場合は、社長が率先して取り組み、誰にでも分かりやすいシステムを目指し、従業員に対する教育にも意を用いて成功した。
以上の諸例から得ることのできる教訓は、納入業者として、費用やシステムの難しさから逃げず、徳田工業のように前向きに取り組むチャレンジ精神が必須だ。また、カシオやD社のように変換可能なシステムを構築したり、A社のように取引先に先手を仕掛けていくべきだ。そして何よりも、豊田技研のようにトップが率先して問題解決に当たらなければならない。
一方、取引先は唯我独尊でシステム構築を進めるのではなく、積極的な情報を提供するなど、全体最適のために納入業者と緊密な連携を取りたいものである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ほんのちょっと心の持ちようを変えるだけで、人生も毎日も変わる
-
2
初心者向けの料理教室、男性受講生が過半数に 家庭での調理頻度も増加
-
3
「大企業は一朝一夕には変わらない」 NTTデータ冨安寛氏がAI時代に重視する原理原則
-
4
なぜ答えが揺れ、堂々と間違えるのか ―― 確率で動く生成AIの正体
-
5
イオン、フィジカルAIで物流改革 配送拠点の自動化率5割達成 深刻な人手不足に対応
-
6
経営と現場の板挟みになりがちなガバナンス、優先してやるべきことを明確に――リクルート 鴨志田昭輝氏
-
7
チェキの新製品、タッチパネル式大画面を初搭載 富士フイルムが2機種新発売へ
-
8
「仕方ないインシデント」まで全力を尽くせるか - さくらインターネット 江草氏
-
9
第55回:「誰が言ったか」で判断していないか──SNS時代、エグゼクティブに必要な「空気に逆らう力」
-
10
「現実にCtrl+Zはない」──フィジカルAI時代に企業が備えるべき新役務「AIスチュワード」とは
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー