問われるコーチング力
増え続ける心の病、リーダーは行動を改めよ(2/2 ページ)
部下の存在を認めているのか
コーチングには「承認」というスキルがある。言葉の通り、人を受け入れ、認めることである。承認は大きく2つに分かれる。
(1)行動に対する承認
(2)存在に対する承認
行動に対する承認とは、部下が何か成果を出したり、うまく物事を進めたりしたときに、「いい仕事ができたね」、「売り上げを30%も伸ばしたね」などと具体的に褒めることである。成果を褒められることで、仕事への意欲を一層高めることができる。これに対して、存在に対する承認とは、ただ相手のあるがままを認めることである。これによって、相手は自分の存在が認められたと感じ、働きがいを感じられるようになるのだ。
実は、この存在に対する承認がビジネスの現場で軽視され続けているのではないかという印象を持っている。成果主義の弊害の1つといえるが、短期の数字を求められるようになり、上司は大きなプレッシャーを感じながら仕事をしていて、自分のことしか考えられなくなる。部下に対してもそっけなく対応し、コミュニケーションをとろうとしない。そのような職場では、部下は働きがいや仕事に対するやる気を奪われてしまう。この大切さをリーダーは改めて認識してほしい。
リーダーとしての自覚を持った行動
具体的には以下のような行動を実践してもらいたい。
毎朝、自分が出社したり社員が出社してきた際に必ず「おはよう」と言う。
何かしてもらったら「ありがとう」と言う。
社員を「○○君」と必ず名前で呼ぶ。
目を見て話をする。
暗い顔をしている人がいたら、「何かあったのかな?」と声を掛ける。
必要ならば叱る。しかし、その後に原因を話し合い、解決策を見つける。
相手が話をしたら、まずは聞いてあげる。
退社するときにも必ず挨拶する。
これはほんの一部だが、実践するだけで職場の雰囲気は大きく変わるし、部下は大きな働きがいを感じられるようになるだろう。ごく当たり前のように感じるだろうか。しかし、これができないリーダーは思いのほか多い。
先日ある企業の経営幹部の方に対してコーチング研修する機会があった。週末にわざわざ出社してまでということでやる気がなかったのか、わたしが「おはようございます」と声を掛けても、目を見ずに小さな声でぼそっと「おはようございます」と言う人はいい方で、ほとんどの参加者は無反応だった。研修が始まってからも眠そうな顔をしている。
正直少し腹が立ち、次のように言った。
「あなたたちの今の姿を見て、職場がどのような状況か手に取るように分かります。朝からリーダーが挨拶すらしなかったらどうなりますか? 皆さんが職場にいる社員のやる気を奪っているのです。会社は皆さんが立派なリーダーになるために高い研修費を払っているのです。このような状況では会社にも皆さんにもマイナスです。お帰りください」
リーダーとして当たり前のことを自覚できていない典型だった。その後は全員が集中して研修に取り組んだのだが。
心の病が大きな問題となる中、リーダーは存在に対する承認の必要性を認識し、ぜひ実践して欲しい。
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著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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