ヒトの働き方を変える新・クラウド戦略
【第4回】クラウドにより変わるシステム運用(1/2 ページ)
ITによるビジネス価値の実現
第1回から3回では、クラウド時代における「ヒト」のチカラの重要性や、「ヒト」のチカラを生かした成功事例などを述べてきた。今回からはITにかかわる方々にとって、より直接的な業務に近い情報システムの運用面から、「新・クラウド戦略」を語ってみたい。
クラウドの価値については、多くの専門家が複数の視点から論じている。例えばコストはその最たる例で「クラウドにするとコストが下がりますよ」と耳にしたことのある読者は多いであろう。
これが、クラウドサービスを販売するITベンダーの売り文句であることは第1回から論じてきた。本稿ではクラウドの価値は、ビジネス価値の実現速度の短縮であると定義して話を進めたい。
ヒトのクラウド化によりビジネス価値を出すというP&Gの事例もあったが、より実際的にITの視点から見ると、クラウドはビジネス上で必要なITサービスを素早くリリースでき、しかもサービスの維持をアウトソースできるというメリットが大きい。
「サービス維持は問題ではない」と考えられる方もいるかもしれないが、例えば大手製造業A社では、サービス開発とサービス維持のコスト比率が3:7であり、しかもIT部門におけるサービス維持コストの増加はそのままIT部門メンバーの参画度合いに直結していた。まさにシステムのお守が仕事になってしまっていたという状況である。
皆さんがクラウドの導入を検討される場合は、その基盤としての機能やセキュリティ、SLAだけではなく、そのサービスがビジネスに必要なさまざまな機能をどこまで部品やテンプレートとして用意しているのか、それらを自由に使い回せるか、そして運用はどこまでカバーされるのか、といった点を併せて比較されることをお勧めしたい。
正しくクラウドを活用した場合には何らかのビジネス要求に対し、次の図のようなコスト効果をもたらすはずである。逆にクラウドを導入しても、これら効果を得られず、構築期間が長引くであるとか、その利用設計や維持にIT部門メンバーのリソースが大きく裂かれるようでは、クラウドのメリットを享受しているとは言い難い。
昨今ではクラウドというキーワードをつけておけばマーケティング効果があると見込んで、従前の仮想化によるサーバ統合をプライベートクラウドと呼称してみたり、レンタルサーバをクラウドと呼称したりと、とりあえず「クラウド」とつけておけ!という風潮もある。
しかし、忘れないでいただきたい。ビジネスにとって必要なのはプラットフォームではなく、ビジネスをサポートするアプリケーションである。有名な例えだが、ビジネスに光が必要な場合、電気が来ていても電球が無ければ光は得られないのである。
クラウド時代のシステム運用
ビジネスにとってのITというと、システム運用の視点から見るとITILv3が記憶に新しい。v2までのビジネスとのアラインという表現から、さらに推し進めてビジネスとのインテグレートという表現に変わっている。調整から統合への進化が行われているわけだ。
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は大きく5つの書籍から構成されているグッドプラクティス集だが、ITサービスマネジメントのデファクトスタンダードとしての地位を築いており、国内でもITベンダー各社がITILを意識したサービスを提供している。
中でも、その中核をなす『サービスストラテジ』という書籍では、まずITをシステムではなく顧客(エンタープライズシステムの場合はビジネスユーザー)に対するサービスであると定義し、そのサービスの継続的改善を謳っている。ここが、まさにクラウド化によって変わるシステム運用そのものを物語っているのではないだろうか。
これまでITの仕組みを「作り」「維持する」ということに注力してきたIT部門は、ビジネスにとって価値のあるITサービスをスピーディーに提供するという「ITサービスプロバイダー」への変革が、クラウド活用により加速されていくことになるであろう。
ここで、クラウドによってどの領域までを調達可能かという視点が再度生きてくる。IT視点から見た業務レイヤーと各サービスの図をご覧いただきたい。
レイヤー1~3についてはクラウドベンダーも数が多く調達しやすい。しかし、レイヤー4以上となるといわゆるクラウドサービスだけでは有効な打ち手は少ない。
実際クラウドを導入していない企業でも、以下の3パターンで実現していることがほとんどである。
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