Gartner Column
ビジネスによってITガバナンスはどう変化するか(2)(3/4 ページ)
自立性志向の企業は各事業部での意思決定を重視
自立性志向の企業のビジネスガバナンスは、各事業部や各拠点での意思決定から最大限のベネフィットを獲得することを目指しています。そこで、ITガバナンスにもこのような拠点ベースでの意思決定を反映させ、そのフォーカスを、コーポレートセンターではなく顧客対応部門に置く必要があります。
ただし、IT組織が事業部全体のシナジーを高める役割を担うことがエグゼクティブによる指令となった場合に限って、全社的なITガバナンス・アプローチに変更する必要があります。MITSloanとGartnerEXPによる調査によって、事業部の自立性を尊重しつつ高いガバナンス成果を上げている企業では、意思決定スタイルに主に次の2点の重要な特徴があることが明らかになりました。
1つ目の特徴は、コーポレートセンターと事業部が関与する連邦制モデルによって事業部の自立性を確立するための方法を含め、今後のIT活用法に関する基本原則を制定している点です。
2つ目の特徴は、ビジネスアプリケーションニーズおよびIT投資/優先順位決定は、多くの場合、事業部だけが関与する封建制スタイルで意思決定し、各事業部による独立的な活動を可能にしている点です。ただし、その独立性はあくまでも、コーポレートIT基本原則内となっています。しかし、自立性を確立するためにビジネスガバナンスが実施されている場合であっても、企業の経営陣は多くの場合、ITにシナジーを生み出す役割を期待しています。全事業部にわたり、少なくともインフラストラクチャに関して標準化を推進することでコストが削減されるためです。
自立性志向の企業では、シナジー志向の企業のように全社的な手引きをトップダウンで提供することはあまりありません。手引きは、多くの場合、より下層部からのボトムアップの情報提供によって形成され、説得のアプローチ(指示・命令ではなく、見識の「売り込み」によって賛同を得るアプローチ)によって広められます。ほかに、ITグループのコミュニティーが、ベスト・プラクティスの共有とコスト削減機会の特定を目的に、全社的に働きかけるというアプローチも使用されます。
自立性を尊重する環境においては、CIOは事業部長と1対1で連携し、交渉を行います。成功を収めている自立性志向の企業は、ボトムアップの合意形成といった手段を活用しています。「あなたが100カ所の工場で期限内に標準を導入した実績があるのであれば、残りの工場が同じ標準を導入することに賛同しない正当な理由を見つけるのは困難になります」とある企業(B社)のCIOは語っています。B社には標準設定プロセスがあり、さまざまな部門がこれを活用して、1つの工場のベストプラクティスを全社標準にしています。
このボトムアップを基本とするプロセスで要する期間はわずか6カ月であり、非常に効率的に機能しています。このプロセスで重要なのは、最終決定を下す各部門のマネジメント委員会(部門長会/部長会)です。最終判断により標準が設定されたら、部門はその標準を実装する必要があります。事業部の業績測定基準は定期的に更新され、いずれの事業部も低評価を受けたくないと考えています。こうした同等レベルでの圧力が推進力となって、各事業部がITをはじめとする業務標準を可能な限り迅速に導入することにつながっています。
自立性志向の多くの企業では、コーポレートのIT組織がITインフラの社内プロバイダーとしての役割を果たし、ビジネスアプリケーションは各事業部に任せています。IT組織は、このような企業間契約のような取り決めをベンチマーク結果やサービスレベル合意書(SLA)によって管理しています。B社のCIOは、IT活動をインフラストラクチャ関連とビジネスアプリケーション関連の2つに分割しています。コーポレートIT組織がインフラストラクチャに対して責任を担い、情報共有を促すコミュニケーションインフラやバルク調達による割引を受けるための最終的な購買決定に主として携わっています。ビジネスアプリケーションに対しては各事業部が責任を担っています。コーポレートIT組織はベンチマークテストによって、インフラの有効性を測定しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏
-
2
「人間洗濯機」が高齢者施設に 福祉の現場に万博技術導入 人手不足解消や産業成長に期待
-
3
味の素社が挑む“dX”とAI駆動開発――“企画・開発・営業ができる人財”が新規事業を加速する
-
4
高島屋・村田善郎社長 挑戦続けるアバンギャルドな百貨店 ベトナムや新型SCに重点投資 My Vision
-
5
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
6
ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュール
-
7
森ビルが挑む、DXを通じた「ヒルズライフ」の充実とコア領域の内製化
-
8
どの区立中からも通えるオンライン将棋部発足 休日はリアル、プロ級も指導 東京都大田区
-
9
公共交通インフラの使命を軸に、事業継続への攻めと守りを大胆に実行する - JAL 鈴木氏
-
10
第52回:「管理」する時代は終わった──AI時代、マネジャーに残された本当の仕事とは?
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー