2020年に向け重要な都市IT基盤となる「スマートシティ」(1/2 ページ)
「2020年 東京オリンピックに向けたビジネス機会」をテーマに開催された早稲田大学IT戦略研究所主催「エグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム」に、竹中工務店 情報エンジニアリング本部長である後神洋介氏が登場。「2020年 都市IT基盤が実現するスマートシティ」と題した講演を行った。
スマートシティに向かうビルの時代
現在、竹中工務店では、スマートシティの実現に取り組んでいる。後神氏は、「2020年には、スマートシティがかなり現実的なものになっているのではないかと考えている。特に2020年に開催される東京オリンピックは、スマートシティの事例のひとつになりその実現に欠かせないのがIT基盤である」と話す。
竹中工務店の建築は、これまでもITの積極的な利活用を進めてきた。ITを活用したインテリジェントビルの第1号は、1987年に竣工した大阪の梅田センタービルである。後神氏は、「1980年代のデジタル化の進展により、ビルの機能や利便性も大きく進化した。しかし、いま考えると当時のIT化は非常にかわいいものだった」と話す。
1980年代のインテリジェントビルの特長のひとつにデジタルPBXが設置され、内線電話が1人1台机に置かれるようになったことがある。テナントサービス会社がデジタルPBXを導入し、シェアードテナントサービスで通信サービスを提供していた。後神氏は、「建物とITの密接な関係は30年程度。IT化によりビル業界にビジネス構造の変革があった」と語る。
変革のひとつがシェアードテナントサービスであり、デジタルPBXやテレビ会議システムなど、企業単独では高価なために所有できない機器を、インテリジェントビルの中でサービス会社が保有して、時間貸しや月額での利用というサービスを展開していた。また、家具や文房具の販売サービスなども提供していた。
一方、2013年以降の近年のビルでは、クラウドサービスが注目されている。後神氏は、「多くの企業がすでにクラウドサービスを利用しているが、ビルの設備まわりも同様にクラウドの波が押し寄せている」と話す。代表的なものとして、オープンデータ、センサーネットワーク(M2M)、ソーシャルメディアなどのクラウドサービスがある。
「すでに多くの事業者がビルのエネルギー使用量を見える化するクラウドサービスを提供している。ビル設備のモニタリング、省エネ制御など、今後もビル向けのITサービスは、どんどんクラウドサービスへと移行していく。こうした新しい技術を取り入れつつ、設備の制御などを高度化して、スマートシティを実現する」(後神氏)
スマートシティを構成する都市IT基盤
スマートシティと聞くとどのようなイメージを持つだろうか。多くは太陽光パネルや風力発電などで省エネした街をイメージするのではないだろうか。太陽光パネルや風力発電も正解のひとつではあるが、建設業界では、これらは「スマートグリッド」と呼んで区別している。スマートグリッドはスマートシティの構成要素のひとつという考えだ。
確かに、スマートシティを構成する都市IT基盤では、電力が非常に大きなテーマとなっている。後神氏は、「原子力発電所が止まっている現在、いたずらに消費電力を増やさない、賢くピークカットしていくなどの取り組みが必要になる。こうした実証実験は、すでに国内でも実施されている」と話す。
竹中工務店の考えるスマートシティは、安全・安心、環境・共生、活力・魅力の3つの分野で構成され、さらに安全・安心が人命・資産の確保、事業継続性の向上、安心の確保、環境・共生が環境負担の低減、エネルギーの低減、自然との共生、活力・魅力がにぎわいの創出、コミュニケーションの活性化、快適空間の創造に分類されている。
「スマートグリッドは、環境・共生の分野に位置づけられる。安心・安全では、災害に強い街、事故や犯罪の少ない街を目指している。活力・魅力では、街に活力や魅力があり、そこに住む人たちが心身ともに健康であることが重要になる。ここまでできてスマートシティと言うことができる」(後神氏)
竹中工務店が建設した2番目のインテリジェントビルが、1990年に竣工したクリスタルタワーだ。このクリスタルタワーが立地する大阪ビジネスパークのリノベーション事業では、スマートシティとしてレベルアップを目指すプロジェクトが推進されている。具体的な取り組みとしては、「ソトコミ」プロジェクトや「V2X」プロジェクトなどがある。
ソトコミプロジェクトは、環境省の実証事業にも指定されているもので、オフィスの自席で仕事をするだけでなく、オフィスの外に出て仕事をする新しいワークスタイルである。オフィス内の共有部分、そしてオフィスの外にもコミュニティスペースを設置して仕事をする環境を構築。場所を変えることで脳が活性化し、仕事が効率的になる。
ソトコミプロジェクトの推進にあたり、個人のスマートフォンにメッセージを送信し、コミュニティスペースに誘導する「sotocomiアプリ」を開発。また照明や空調を自分の好みに操作したり、人感センサーにより離席したときに照明や空調を弱めたりできる「パーソナル環境制御システム」により、快適性の向上と省エネの両立を目指している。
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