ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する(2/2 ページ)
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まずは販売至上主義から脱却し、マーケティング発想に切り替えることです。そして「売ってはいけない」のがどんな状況なのか、その理由が何なのかが分かれば、売れて儲かるようになります。
本書のハイライトを紹介
「他社も似た商品やサービスを売っている。だから差別化は無理」と言うビジネスパーソンは多くいます。しかし世の中には、同じ商品を売っているのに、どんどん売れる会社もあります。彼らは商品を売っていないのです。
例えばどの保険代理店も同じ保険商品を売っています。保険代理店は商品では差別化できません。さらに保険のお客は、普段は保険のことはほとんど考えていません。
そんな業界で、抜群の業績を上げている保険代理店があります。私がこの保険代理店の社長に話を聞いた時のこと。冒頭で、こう言われました。「特別なことは、何もしていません。当たり前のことをしているんですが……」
この保険代理店はお客と保険の話は一切しません。運送業の経営者と出会うとこんな話をします。
「運送業の労務管理って、時間管理じゃないですよね」
「そうそう。そこで困っているんですよ……」
運送会社は、労務管理が後回しになっているところが多いのが現実。通常、労務管理は「まずタイムカードで時間管理」となりがちです。でも運転手の仕事はA地点からB地点に荷物を運ぶこと。時間管理では労務管理はできません。だから、運送会社の経営者は困っています。
しかし、この保険代理店は解決策を持っているわけではありません。その代わりに社労士を招き、経営者と一緒に勉強会を行い、悩みを解決していきます。さらに会社は会計・法律などさまざまな問題を抱えているので、司法書士・会計士・弁護士なども招き勉強会を行います。経営者は自社の悩みが解決できて助かります。実は士業の先生方は自分で営業できないので、助かっています。この保険代理店は、顧客企業の社内ルール作りも手伝っています。
そして、さまざまな業務で保険が絡みます。そのうちこんな会話が始まります。
「当社はこんな保険に入っているんですけど……」
「この状況なら、こっちの保険商品がお勧めですよ」
この保険代理店は、すでにその会社の課題や経営状況を熟知し、保険商品の知識もあります。その会社に最適な保険も分かります。しかし、この段階でも保険を売りません。
「担当の保険代理店さんに、保険の変更をお願いするといいですよ」
ここでほとんどの経営者は、こう尋ねる。
「貴社も、この保険を扱っているんですよね」
「ええ、そうですよ」
保険代理店はどこも同じ商品を売れるので、この保険代理店も同じ商品を売ってます。
「また確認するのも手間ですから……貴社に保険を切り替えます」
どこも同じ保険商品を扱っているから、自分の課題を理解し、最適な商品を選び、提案してくれるほうがいい。確かに「考えてみれば、当たり前のこと」をやっています。どこも同じ商品を扱う保険代理店だからこそ、顧客の課題理解が出発点。似た商品を売っているからこそ、差別化できるのです。
売る方法は、発想を変えればいくらでもあります。それこそお客に売ってもらう方法もあるのです。まず考えるべきは、ターゲットの顧客を見極めて、その課題を理解すること。そして解決策をどのように提供するかを、それまでの常識にとらわれずに考えることなのです。
著者プロフィール:永井孝尚(ながい たかひさ)
マーケティング戦略コンサルタント。
慶應義塾大学工学部(現・理工学部)を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。
2013年に日本IBMを退社して独立、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供し、マーケティングや経営戦略の面白さを伝え続けている。
さらに仕事で役立つ経営戦略を学ぶための「永井塾」も定期的に主宰している。
主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)、6万部『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)、ほか多数。最新著は『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)。
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