人を活かすのは「最強のボス」ではなく「弱いリーダー」――「人的資本経営」元年に開眼すべき新しいリーダーの姿(1/2 ページ)
「人的資本経営」新たな潮流で問われる人・組織の在り方
世界のトップ企業は確実に「人的資本経営」へと舵を切っています。
人的資本を活かせる企業とそうでない企業との差は開くばかりです。
世界の時価総額ランキングを見ると、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、テスラ、メタ……など、ソフトウェアやプラットフォームに強みを持つ企業がトップにずらりと並びます。
これらの企業に共通するのは、人材や知財などの無形資産から価値を生み出していること。その源泉は人間の持つ知識や技術や発想、つまり人的資本です。
この「人的資本経営」の潮流に、日本の企業は乗り遅れていると言わざるを得ません。かつて日本の製造業を世界一に押し上げたのは、日本的経営といわれる強固な仕組みでした。属人的な能力に頼らず、均質な製品やサービスを提供する。それは圧倒的な強みでしたが、人の個性や多様な能力を活かすことには不向きで、人的資本への投資が進んでいないのが現状です。
例えば「S&P500」と「日経225」の市場価値に占める「有形資産」「無形資産」の割合を比較してみると、日本企業の持つ資産が設備や建物、現金などの有形資産に偏っていることが明確に分かります。
また、働く人の価値観も変化しています。近年の働き手は経済的、物質的な豊かさだけでは仕事を選びません。自己成長や自己実現、あるいは社会貢献に働く価値を求めています。自分が働く意義や、自分の能力を活かす「自己効力感」がモチベーションになります。
これは若手だけに限りません。40代以上の中高年世代も「自分はこのままでいいのか」「自分はどうあるべきなのか」とキャリアを考え直したり、学び直したりするケースが増えています。
いま、日本の企業も「人的資本経営」へと大きく変革せざるを得ない地殻変動が起きています。
事業には、人の力によるイノベーションが必要です。
投資家は、人に投資しない企業を「未来のない企業」とみなします。
個人は、働く意義や自己成長のない企業からは流出します。
社会は、人の多様性を尊重しない企業を見放します。
「企業は人なり」はもはや単なるお題目ではないといえるでしょう。
「弱いリーダー」だからこそ人的資本をうまく活かせる
日本企業の「人的資本経営」はまだ始まったばかりで、現状は人的資本情報の開示や戦略策定が議論の中心です。しかし今後実行にあたっては、現場の働き方、特に管理職以上のリーダーの役割が大きく変わります。
より効果的に人的資本を活かせるのは、人材をやりくりして管理で結果を出す「強いボス」ではなく、どんどん人に頼ったり任せたりすることで結果を出す「弱いリーダー」です。
弱い、というと語弊があるかもしれませんが、自分の弱点や未熟さを素直に受け入れて、外部の知見やスキルを積極的に取り入れる柔軟性は、人的資本を活かす大切な資質だと思います。
かつての終身雇用・年功序列のピラミッド型組織では、管理職が知識も経験も秀でているのが普通でした。また、仕組み化と分業が確立された仕事では、業務に専門特化した能力を磨き上げればよく、多様な力を活かす必要はありませんでした。
ところがいまは、終身雇用・年功序列を維持することが難しくなり、年齢もバックグラウンドもまるで異なる人材が組織内に混在するようになっています。
仕事も、ツールが多様化し、情報量は爆発的に増え、処理するスピードも加速して、どんどん複雑化しています。
もはや管理職一人が、自分の持てる知識や経験、スキルの範囲で「やりくり」するには限界があります。むしろ自分には分からないこと、できないことを部下の「強み」として発見し、ときには組織の外から人的資本を取り入れて新たに価値を生み出すことが、これからの管理職の仕事です。
中間管理職から、チーム経営責任者へ
それでは、人的資本時代における管理職は、どのような存在になっていくのでしょうか。私が考える方向性をひと言でまとめると次のようになります。
「資源」をやりくりするポジション
↓
「資本」から利益を生み出すファンクション
従来の中間管理職とこれからの管理職はまったく違う仕事になります。
私たちはそこで、「人的資本経営」の時代における管理職を「チーム経営責任者」あるいは「TMO(Team Management Officer)」と呼んでいます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「レッドガス」時代の羅針盤【第三章】従来型グローバルサプライチェーン設計思想からの脱却
-
2
ドコモFG、今秋までに金融AI試験版を開始 投資運用を助言し、若年層取り込み狙う
-
3
レアアースをリサイクル、国内初 三菱電機やダイキンが信越化学と 脱中国の供給網構築へ
-
4
第50回:なぜ「優秀なマネジャー」ほど経営に嫌われるのか
-
5
「セキュリティは事業を活かす出汁、責任者はCIMOで目指せ」 - JTB 椎野氏
-
6
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
7
第11回:世界の潮流は「これからのリーダーはEQの高いリーダー」。日本にも根付くか?
-
8
「その100時間は、何も生み出していない」――認知科学者・堀田創氏が斬るリーダーの"見えない疲れ"
-
9
来春卒業する大学生のIT企業人気ランク NTTデータ1位 Skyが急上昇、富士通も
-
10
重要文化財の弁財天像 3Dデータ化で確実に継承へ 「将来に残したい」神奈川・江島神社
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー