ドラッカーが教える「成功に必要なもの」
第2回『超訳ドラッカーの言葉』取締役編 取締役の仕事は1人でこなすことは不可能であり、他の取締役と力を合わせて成り立つ仕事(1/2 ページ)
こんにちは。山下です。前回、第1回『超訳ドラッカーの言葉』経営トップ編では、組織に必要な3つのことをお伝えした。今回のテーマは取締役についてだ。この連載では、取締役を「社長以外の役員」と定義して話を進める。
どう経営の仕事にあたっていいか分からない
名刺に「取締役」と書いてあっても、経理出身の取締役は毎日エクセルをにらみ、営業出身の取締役は日々客先を走り回っている。なぜ、取締役は取締役として動かないのか。取締役になった人は、1つの分野で際立った成果を上げた結果、経営陣の一員に昇格した人だ。しかし、「これまで経験を積んできた分野の仕事」と「会社全体をマネジメントする仕事」はまったく違う。部長クラスまでは自分の部門で成果を上げていればよかったものが、取締役になると、これまでの仕事の勝手が変わる。仕事の勝手が変わるために、取締役になった人も、どう経営の仕事にあたっていいか分からないのだ。かく言う私がそうだった。
取締役兼○○部長
管制塔の仕事とパイロットの仕事はまったく違う。管制塔の仕事とパイロットの仕事を兼任することはできない。同じように、取締役の仕事と部門長の仕事もまったく違う。取締役の仕事と部門長の仕事も兼任することはできない。しかし、多くの取締役は取締役兼○○部長というように、2つの異なる仕事を兼任している。当然必ずどちらか1つは留守になる。また、取締役という肩書きが付くと、「できて当然」とされ教育対象から外される。そして、「分かって当然」とされ、意思の疎通は行われない。その結果、取締役は、社長の意を察することが「取締役の心得」とされ、社長の意を察して動くことが、まるで「取締役の仕事」であるかのようになる。こうして、取締役のエネルギーは、会社の成長より、社長の顔色をうかがうことに向けられていく。いったい取締役の仕事とは何なのか。
ドラッカーはこう言っている。
トップの本来の仕事は、昨日に由来する危機を解決することではなく今日と違う明日をつくり出すことであり、それゆえに、常に後回ししようと思えば、できる仕事である。状況の圧力は常に昨日を優先する。
ピーター・ドラッカー『創造する経営者』
ここで言うトップとは、会社の最上層部のことだ。ところが、多くの取締役は会社の最上層部でありながら、取締役兼○○部長というように、1つの部門の責任者を兼任している。事実、営業の責任者を兼任している取締役は、予算が達成できていなければ、「今日と違う明日をつくり出すなんて悠長なことを言っている場合じゃないぞ!」ということになり、まずは、予算達成を最優先に動く。まさに、「状況の圧力は常に昨日を優先する」だ。
それは、経営会議ではなく部門長会議
取締役兼開発部長は、開発の進捗が遅れていれば業務の調整に忙殺され、取締役兼管理部長は、広報、経理、労務、法務、IRなど、多種にわたる業務の対応に、日々追われている。取締役兼営業部長は、予算が達成できていなければ目に火花を散らして、予算達成に全力投球することは、さきほどお伝えしたとおりだ。あまりにもやることが多すぎて、取締役としての仕事は置き去りになる。それは、無責任だからではなく、本当に忙しいからだ。
経営会議で話されることといえば、それぞれが担当する部門の状況報告だ。営業部長は売上のこと、開発部長は商品のこと、管理部長は人事や労務に関することだ。「会社をどう良くし変えていくか」という具体的な議論は交わされず、取締役の全員が、「自分は持ち場の仕事をちゃんとやってます」という発表で終わる。それは、経営会議ではなく部門長会議だ。
日々の仕事をこなすことだけで精一杯
事業が軌道に乗っていて、収益が安定してさえいれば安泰だ―。つい、そう考えてしまう。しかし現実は、「まさかこの会社が!」と思う大企業が傾いた例は少なくない。なぜ、不動の地位を獲得したかのように見えた最強の企業が、力を失ってしまったのか。ドラッカーはこう言っている。
今日最強の企業といえども、未来に対する働きかけを行っていなければ苦境に陥る。個性を失いリーダーシップを失う。残るものといえば、大企業に特有の膨大な間接費だけである。ピーター・ドラッカー『創造する経営者』
未来に対する働きかけがおろそかになれば、どんなに強い会社であっても、やがては苦境に陥ってしまう。社会は常に変わっていくからだ。しかし取締役は、「未来に対する働きかけ」どころではなく、1つの部門の仕事に引きずり込まれ、日々の仕事をこなすことだけで精一杯だ。取締役が経営しなくていいのでしょうか。もとい、経営者が経営しなくていいのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
経営者は経営しなければならない。
ピーター・ドラッカー『Harvard Business Review』
取締役は経営の仕事にあたらなければならないのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ドラッカーが教える「成功に必要なもの」
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
2
「管理型リーダーは終わった」──1500年続く老舗企業から学ぶ、人が変わりたくなる組織の作り方
-
3
「セキュリティは事業を活かす出汁、責任者はCIMOで目指せ」 - JTB 椎野氏
-
4
第1回:到来した「自律型AI時代」
-
5
高島屋・村田善郎社長 挑戦続けるアバンギャルドな百貨店 ベトナムや新型SCに重点投資 My Vision
-
6
「ごく普通の会社」がランサムウェア被害で直面した損失と再生の記録――菱機工業 小川弘幹氏
-
7
灰皿を投げられ、経営者の言葉を繰り始めたベンダーフリーの守護神 - タニウム 楢原氏
-
8
「サプライチェーン」を人質に取るようになったランサム攻撃 ――ラックの西本氏が語る、万一への備え
-
9
隣に座っている部下の価値観を知っているか?
-
10
「なぜ、コンサルティング業が存在しているのか?」――社内コンサルタント的な働き方のススメ
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー