新たなイノベーションを創造するIT経営ロードマップの“本質”とは?(1/2 ページ)
IT経営の指針となる「IT経営ロードマップ」
日本のIT投資はひと昔前と比べて確かに増加傾向にあるものの、ITの活用に先進的な米国などと比べると、その額はまだ十分とは言えない。IT化を進めるにあたり、上場企業でも多くが部門の壁の問題に直面し、経営とITの融合が図られた全社最適段階にまでこぎつけているのは一部上場企業であっても約3割にとどまるとも言われている。
そうした日本企業を尻目に、欧米のグローバル企業は国際分業やマーケティング、広告など多様な局面でIT投資を実施し、グローバルなビジネスモデルの展開を強力に推し進めている。この現実を踏まえれば、経営とITの融合、さらに戦略的なIT投資の早急な実現が、日本企業の大きな課題であることに疑念を挟む余地はあるまい。
その解決を支援すべく、経済産業省が2007年から開催しているのが、先進的IT経営を実践している企業のCIO(最高情報責任者)および専門家をメンバーとして招いた「CIO戦略会議」であり、同会議で取りまとめられたIT経営を実践するまでの指針が「IT経営ロードマップ」にほかならない。
早稲田大学IT戦略研究所が11月12日に開催した経営層向けのセミナー「インタラクティブミーティング」に登壇したNTTデータ経営研究所パートナー・情報戦略コンサルティング本部長の三谷慶一郎氏はCIO戦略会議を裏方として支えてきた一人だ。同氏によると、その中身はITの活用を通じて「業務や情報の見える化」、「業務の共通化」、「業務の柔軟化」と段階的にITの活用を高度化することで、顧客や取引先などとの「つながり力」を強化し、新たなイノベーションの創出するアプローチであるという。その上で、三谷氏は取り組みを円滑に進めるための一番のポイントは経営者の意識改革にあると聴衆に訴えた。
「企業へのヒアリング調査を何度も実施した結果、ITで大きな成果を上げられていない企業では、経営者のほとんどが、ITは総務部や情報システム部門の担当であり、自身とは無関係だととらえていた。しかしこれは大きな誤りだ。ITは貴重な経営資源であり、その活用を進めるためには、経営者自身がITを用いた企業改革に率先して携わることが不可欠なのだ」
まずは情報と業務の見える化から始めよ
では、具体的に経営者はいかにIT経営の実現に取り組んでいくべきなのか。その手法について三谷氏は、各段階において注力すべきポイントを基に次のように説明した。
まず「見える化」において取り組むべきは、情報や業務の双方の可視化と、ステークホルダーへの情報開示を通じた透明性の確保である。情報の見える化は自社のビジネスモデルに即して情報の使い方などを洗い出すことで実施する。業務の見える化は、現場の責任者を巻き込みつつ、ITと一体になった業務プロセスの構築に取り組むことが基本となる。この作業を通じて実現が見込まれる最も大きなメリットは、経営層と現場、IT部門の間でITについての言語の共通化が図られ、全社的なコミュニケーションの活性化につながることだ。
「当社の調査によると、IT戦略が成功している企業は失敗している企業と比べ、社内調整に力を入れていると応えた割合が5割以上も多かった。このことからも、密なコミュニケーションを通じIT戦略に関して社内の合意を取り付けることが、IT経営を成功に導くために欠かせないことは明らかだ」(三谷氏)
見える化を一歩推し進め、社内の情報を積極的に「見せる」ことは、企業のポテンシャルのアピールにもつながると三谷氏。ネット証券大手のカブドットコム証券は委託手数料の推移やサポートセンターリポートなど、非財務情報もWebで積極的に公開しているが、この狙いもまさに自社の能力を開示するためだと三谷氏は分析する。
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