あなたは部下の変化に気付いているのか?:問われるコーチング力(2/2 ページ)
社員の職離れを防ぐためには、彼らの欲求を満たしてあげる必要がある。たとえ卓越したコーチング技術がなくても、ちょっとした気付きさえあればうまくいくはずだ。
欲求を満たすのは「行動」と「存在」に興味を持つこと
つまり、日常のマネジメントでは、「所属」と「承認」の欲求の区別を意識することなく、欲求を満たす行為をすれば良い。「所属」または「承認」欲求を満たしてあげる方法は2つある。「行動に対するもの」と「存在に対するもの」だ。
前者は、相手が行った行動に対して取る行為。例えば、「褒める」「感謝する」「表彰する」など。後者は、相手が存在していることそのものに対する行為。例えば、「名前を呼ぶ」「部下の変化に気付く」「メールの返事をする」「相手の話をよく聴く」「相談する」「誕生日におめでとうと伝える」「相づちを打つ」など。
こう書くと、ごく当たり前のことのように思うかもしれない。しかし、頭では分かっていても、実行するとなると、そう簡単ではないものだ。
なぜ簡単ではないかというと、「行動に対するもの」と「存在に対するもの」のいずれも相手を普段からよく見て、興味を持っていないとできないことだからである。つまり、「観察」が大事なのだ。「When(いつ)」「What(何を伝えるか)」が的を射ていないと、拒否反応を生み出してしまうことにもなる。
私が最初に質問したQ.2とQ.3は、「観察」の大切さをご理解いただきたいためにしたものだ。
「観察」のポイントは、変化を把握することである。変化は、「髪を切った」「風邪をひいた」という身なりや体調に関連するものから、「一人で営業ができるようになった」「手直しなしで企画書を作成できるようになった」など仕事に直接関係するものなどさまざまである。管理職としては、仕事に関係するしないにかかわらず、変化を察知し、見ていたことを言葉にして伝えてほしい。
上記の例で言えば、「髪を切ったんだね」「風邪をひいてるようだけど、大丈夫か?」「一人で営業ができるようになったね」「手直しなしで企画書を作成できるようになったな」など。
「観察」をすれば、コーチングのテクニックがうまくなくても効果が出るはずだ。まずは部下が変化したその事実を部下に伝えてあげてほしい。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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