リーダーが抱える20の悪い癖:問われるコーチング力(2/2 ページ)
元GE会長のジャック・ウェルチ氏をコーチした経験を持つエグゼクティブコーチングの第一人者によると、組織の上に立つリーダーは共通した悪い癖を抱えているという。
過度の負けず嫌いは危険
組織の運営も非常にぎくしゃくし、自身の判断ミスで会社をつぶす可能性も出てくる。経営破綻した米Lehman Brothersのリチャード・ファルドCEO(最高経営責任者)に対して助言した人はいただろう。不動産取引に偏り過ぎていて、危険ではないかと警鐘を鳴らした人もいたはずである。しかし、その話は彼にきちんと届いていただろうか? あるいは、彼はその言葉に耳を傾けただろうか?
20の悪癖は、「自分は正しい」「人に負けたくない」といった思考の枠に起因するものが大半だ。人に負けたくないので、ひと言価値を付け加えようとする。自分が正しい、優秀だと思うので、人に対して勝手に善しあしの判断を下し、傷つける破壊的なコメントをするのである。
人として人物評価されることほど屈辱的なことはない。上司から「お前はこういう人間だ」と決めつけられた部下はどういう気持ちになるだろうか? 心の中で思うことはあるかもしれないが、口に出すのはもってのほかである。好ましく思ってない人に「あいつはこういう人だ」と陰で言われているとしたら、煮えくり返る思いにならないだろうか。破壊的なことを言う根底にあるのは、負けたくないという意識や、常に欲求が満たされない不安があるからだ。
負けたくない、欲求が満たされない → 不安 → 人に破壊的なことを言う
欧米企業の経営者たちは、時速300キロで走る新幹線の運転手のような印象を受ける。日本企業に比べると、彼らは短期間で結果を求められることが多く、毎月、3カ月ごと、半年ごと、1年ごとに査定され評価を下される。常に欲求が満たされないので、言葉が荒くなりがちで人を傷つけてしまう。きちんと他人を認めることもできなくなる。
もちろん短い期間で結果を出すことも大切だが、ある程度の時間をかけて成果を残すことも必要である。米国のウォールストリートで起きた金融危機は、全員が短期的な利益を求め過ぎた結果、このような事態に陥ったのである。じっくり育てるといった経営の大切さが見直されていくだろう。
自分を見つめる鏡を手に入れろ
20の悪癖のうち、当てはまるものがいくつあっただろうか? 自分では客観的に見られないこともあるので、周囲の人に聞いてみるといい。ただし、全員の意見をうのみにする必要はない。10人中8人が問題だと指摘すれば当てはまる。10人中2人ならば気にする必要はない。
悪癖を一度にすべて直すことは不可能である。まずは1つか2つに焦点を絞り、それを意識して行動してほしい。それだけでも、自分自身や周りに大きな変化が現れるはずである。
もう一点強調したいのが、リーダーは自分を見つめる鏡を持ってほしいということだ。自分の顔や姿は、毎朝鏡で見て確認するはずである。「今日は顔色がいい」、「今日は疲れているな」などと自分を見て考える。自分の行動についても、振り返る癖を持つ必要がある。行動の「鏡」を持ち、毎日鏡に映る自分を確認する。それを意識し少しずつ悪癖の改善に努める。それが行動変革につながっていくのだ。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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