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「教科書なきCIOの世界」――カシオ計算機・矢澤氏CIOインタビュー(3/3 ページ)

1997年に情報システム部門に異動してきて以来、メインフレームからオープンシステムへの移行、グローバルでのERP導入、サプライチェーンの整備などさまざまな企業改革の担い手となったカシオ計算機の矢澤氏。「ITによって経営戦略に貢献することがわたしの役目」とCIOとしての使命を強調する。

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CIOの教科書などない

――CIOの役割についてどうお考えですか。欧米企業の概念で言えばCIOは経営マネジメントの1人です。

矢澤 米国のCIOは技術をよく知っていて、IT基盤の改革を自分で考えています。そういう役割のCIOは日本企業でも必要です。10年前の当社の情報システムは部門利用にとどまっていました。そこでシステム基盤を手直ししたり、情報システム部門の人材をそれに合わせて変えていくことで部門間の壁を取り払い、全社横断的な情報システムを構築することができました。このステージまで来たことは強みです。

 もう1つCIOの役割として、経営効果を考えたとき、その裏側にあるビジネスプロセスや意思決定のあり方と情報システムを結び付けて考えなくてはなりません。現在わたしは社長の直下のポジションにいて、よく「意思決定やプロセスまで踏み込まないと役割を果たしたことにはならない」と言われます。

 CIOは、はっきり言って教科書がない世界です。ITだけでなくビジネスの改革まで考えて行動できるかが重要です。当社の社長は、究極の情報システム部門というのはビジネスにコミットするものだと考えている。経営のツールとしていかにITを進化させて、意思決定へ貢献できるかが強く求められています。

――経済産業省が2008年6月に発足した「IT経営協議会」では、CIOの育成についても言及されています。CIOは教育できるものでしょうか。

矢澤 教育は重要だと思うし、わたし自身も教育しているつもりです。CIOに必要なスキルとは、決して技術的なものではなく、基本的なビジネスに必要なコミュニケーション能力や問題分析力、プロジェクトマネジメント力などです。プロジェクトマネジメントといっても、よくIT業界で言われるものではなく、業務改革に対して情報システム部門で全体をどうコントロールしていくかというものです。

 当社ではプロジェクトマネジメントの手順をある程度定義しており、そこに必要なドキュメントや運用方法を標準化しています。現場では品質管理(QC)をベースにしたマネジメントを用いて、上流工程では業務改革を含めたマネジメントを行っています。ERPなどのシステムを自社で導入した経験があるため、上流コンサルタントに必要な業務プロセスのスキルなどを社員が身に付けています。

――IT経営協議会には矢澤さんも主体的にかかわっています。具体的にどのような取り組みをしているのですか。

 いくつかの分科会があり、わたしはバリューチェーン(価値連鎖)の分科会を担当しています。第1回のIT経営協議会では基本的な理念を構築しただけなので、これから実践的な手法に落としこんでいく必要があります。ルールやフレームワークなど具体的なアウトプットを出したいと思っていますが、バリューチェーンは業種、業態によってまったく異なるのでまとめるのは非常に難しいです。

 例えば、製造業はプロセスが課題ですが、銀行にとってプロセスは特に問題になりません。各社それぞれに悩みを抱えています。それらの共通課題をどのように引き出し、解決策を見いだしていくかが今後重要だと思います。

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