新たなイノベーションを創造するIT経営ロードマップの“本質”とは?(2/2 ページ)
ITを活用して企業改革を推し進めるIT経営の重要性が叫ばれて久しい。「見える化」、「共有化」、「柔軟化」と段階的にIT経営を高度化させることは、新たなイノベーションの創造にもつながるという。
情報システム部門が企業改革を推進する?
次の「共有化」では、見える化が完了した情報や業務を共有化し、部門の壁、さらに業種や業態を超えた社内外との連携を実現するための情報基盤の構築や、バリューチェーンの最適化が最大のミッションとなる。そのために、まずは自社のバリューチェーン全体を見渡した上で共通化の目的や範囲を確定し、メリットやコストのバランスを考慮し、最適と判断される方法で業務を再構築するわけだ。もちろん、再構築後に併せて、場合によっては組織制度を見直す必要があるほか、従業員への教育も十分に行わなければならない。
その成功の鍵を握るのが、すでに述べた経営者自身の業務改革への積極的な関与である。ITによる効果を最大限に高めるためには、情報システムの構築に加え、組織と業務の変革を欠くことができない。また、業務改革を行う上では全社的な視点で部門間の利害を調整する必要があり、それらの判断を的確に下すのは経営者以外では困難なためだ。
もっとも、社内で最もITに精通し全社業務を知り得る立場にあるのは情報システム部門である。であるならば、情報システム部門が業務改革を推進する役割を担っても、何ら不思議ではないと三谷氏は指摘する。ただし、現実には情報システム部門主導での業務改革は、現状では極めてまれなのが実態だ。
「残念ながら現状では、情報システム部門の多くがいわばベンダーの窓口や現場の御用聞き組織という域を脱していない。IT経営の重要性がさらに高まる中で、全社の業務プロセスまで責任を終えるよう、情報システム部門にはさらなる高度なスキルの取得も今後は求められるはずだ」(三谷氏)
情報の使い方を見直し、新たなイノベーションの創造を
最終段階の「柔軟化」では、情報を迅速かつ最適な形で活用できるよう、事業構造の転換に取り組み、経営環境の変化に柔軟に対応できる環境を整えることが経営者のミッションとなる。併せて、柔軟に組み替えるべき業務を特定し、迅速に対応できるよう、業務やシステムのモジュール化を促進することも重要となる。
「見える化」、「共有化」、「柔軟化」の各段階のポイントを紹介した後、三谷氏はIT経営の最終的な狙いは情報活用にあると断言し、次のように講演を締めくくった。
「組織的知識がいかに生み出されるのかを説明した一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏らのSECIモデルからも分かるように、情報の結合と分離が繰り返されることで新たなイノベーションが創造される。言い換えれば、既存の情報の利用方法を見直すことで、新たな付加価値が創造できる可能性は決して小さくないのだ。ITはいわばアンプに過ぎず、情報を最大限に活用できる仕組みの整備こそ、IT経営ロードマップの“肝”と言えるのだ」(三谷氏)
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