「数字」や「データ」がすべてだと思う部下に悩む上司:ビジネスマンの悩み相談室(2/2 ページ)
今回は「数字」や「データ」がすべてと考え、現場になかなか足を運ばない部下を抱えるリーダーの方にお話ししたい。
モチベーションを上げる方法
このような「理論派」の部下を持った場合、どのように仕事を任せていけばいいのだろうか。「理論派」の人のモチベーションが上がるポイントは「正確さと理論性への欲求に訴える」ことである。
具体的には、次の5つである。
- 仕事内容と目的をはっきりさせる
どのような仕事なのか、なぜこの仕事をするのか明確にする。「顧客をいくつかに分類して検討し、適切な提案をできるようにしたいので、それぞれの担当者が持っている顧客にどんな特性があるのかをヒアリングしてほしい」
- 文書で示す
口頭による指示のあいまいさを嫌う傾向が強いので、指示を出す際には、必ず文書でも示すとよい。メール等で概要を伝えた後、口頭で支持をするとスムーズになる。「お願いしたいことは、○月○日までに××会社の担当者を訪問し、弊社の製品に対する感想を聞き出すことです」
- 1対1で伝える
慎重なところがあるので、「1対1」を好む。他の人がいる前で指示を出したとしても、その後に個人的に呼び出すなどして、再度話したほうがよい。
- 簡潔に具体的に評価する
「この前の企画はクライアントも気に入っていたよ。良くやったね。」といった抽象的な褒め言葉は好まず、具体的に簡潔に評価されることを好む。「君のプレゼンは論理的で主張がはっきりしているうえに、企画も斬新だね」
- 念入りな計画の時間を与える
完璧主義で計画性を重んじるので、計画には十分な時間を与えることが望ましい。「今日中になんとかやってくれ。」という仕事よりも、「来週までに○○について報告書をまとめてほしい。」と時間に多少のゆとりがある仕事を割り振るとよいかもしれない。
上記で述べたことは、チームの他のメンバーとの兼ね合いもあるため、実践するのがむずかしいかもしれないが、少なくとも「理論派」の人がどのようなことを好み、どのようなことでモチベーションが上がるのかを知っておくことは、彼らに能力を発揮してもらううえでとても大切である。
なお、最後に1点強調しておきたい。理論派の人は、プロセスを重視し、結果や成果よりも完成度や品質を重んじるという傾向が強い。
「とても良いものなのだから相手は必ずわかってくれる。わかってくれないのは相手に問題がある」
このように考えてしまうこともある。ただ、実際のビジネスの現場では、クライアントが満足してくれる、消費者が買ってくれる――結果が出なければ、いくら良いものでも意味がない。上司は結果を出しやすいプロセスを示すとともに、結果にこだわってほしいということをはっきりと伝えることが大切である。また、現場に足を運ぶ大切さもしっかり認識させる。そして、もし成果が出たのならば、簡潔に明確に評価する。
「先日のクライアントへの提案は現場を見たうえで数値的な根拠を示し、クライアントもイメージがしやすかったので、受注につながった。ありがとう」
ビジネスで「数字」や「データ」などの事実を重視することはとても大切である。その姿勢が身についている理論派の人は、伸びる可能性を大いに秘めている。適切に仕事を任せ、結果の重要性を認識させることで、部下が成長するよう導いてほしいと願っている。
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著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。「ビジネスマンの悩み相談室」は電子書籍でも配信中。「自分は頑張っていると主張する部下に悩む上司」「ぬるい部下に悩む上司」「若い人には横から目線で共感する」(各250円)
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