世界経済崖っぷち:藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)
ユーロ圏が揺れている。ギリシャの財政危機に端を発したユーロ圏の「国債危機」。しかしもはやギリシャの破綻は「想定内」といえそうだ。
世界経済は「危険水域」に
2008年当時は世界の主要経済国20カ国が初めて首脳会議を開き、世界経済成長を維持するために大規模な財政出動を行うことを申し合わせた。アメリカが約7800億ドル(当時の換算で約80兆円)、中国が4兆元(同約60兆円)などである。こうした財政支出で確かに世界経済は一定の回復を果たしたのだが、この財政支出のために各国の財政は悪化している。そして典型的にはアメリカに見られるように、景気はある程度回復しても雇用が増えない。企業が投資を抑えているために、雇用が増えない。
本来なら景気が回復して雇用が増え、そして税収が増えて、財政は再建へ歩み始めるはずだが、実際には世界経済は息切れしているような状況だ。2008年以来、世界経済を牽引してきた中国やインドもインフレ率が高くなっているために、金融を引き締め、成長率のスローダウンを図っている。全体的に見て、3年前のようにアジアの成長が世界経済を引っ張るというわけにはいかない。
ユーロ圏の危機に対して、アメリカは手を差し伸べることはできない。オバマ政権は連邦政府の債務上限を引き上げるのに精一杯で、とても他国を支援する体力はない。日本も何もできまい。世界最大の外貨準備を誇る中国ぐらいが唯一ユーロ支援、具体的には窮迫している国の国債を買う余裕がある。しかしEUが中国にとって第二の貿易相手であるとしても、ギリシャやポルトガル、アイルランドの国債を何の保証もなく買うことはできない。ドイツやフランスといった大国がそうした国債の保証をすれば別だろうが、ドイツやフランスにとってそれをするメリットはない。
とはいえ、IMF(国際通貨基金)が警告したように、いま世界経済は「危険水域」に入っている。イタリアやスペインに火がつかないうちに、何とか収めることができるのかどうか。世界は固唾を呑んで見守っている。
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