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問題がないという部下が問題ビジネスマンの悩み相談室(2/2 ページ)

指示したことをきちんとこなし、問題なくことを運んでいる部下は本当に問題がないのだろうか。問題ないと捉えた時点で次への成長を止めてしまっている場合がある。あなたの部下は大丈夫だろうか。

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「問題ない」がまん延する日本の職場

 ただし、Lさんのような人は珍しくないとわたしは考えている。逆に現在の日本の職場ではかなりいるのではないかと思う。「海外に行きたくない」「昇進に興味がない」そんなことを口にする人が多いと聞く。

 一方で、上昇志向がない傾向は女性に多い場合もある。企業によっては「地域選択型」という働き方を選べる企業もあり、仕事に刺激を求めず、仕事はそこそこ、プライベートが充実すればいいと思う人もいるようである。

 しかし、仕事が充実していなくて、プライベートが充実していれば、本当に人は満足するのだろうか。仕事は人を育てる最高の方法だとドラッカーが言っている。

 仕事には1日8時間またはそれ以上費やしており、それが充実していないと人生が充実しているとはいえないのではないかとわたしは思う。プライベートが充実していてもいいが、仕事が充実するとさらに人生が豊かになるのではないだろうか。

仕事の楽しさを実感させる

 「問題ない」と言い、何かにチャレンジしたがらない部下にまずはどうすべきだろうか。

 当たり前のように聞こえるが、仕事の楽しみを実感させることである。

 指示したことはきっちりとこなすのであれば、少しストレッチした課題を上司が課してあげるのもいいだろう。「この資料を○日までに作ってくれ」というのではなく「この資料はクライアントに提案したいものなので、○○のことについて調べて○日までに作ってほしい」と言ってもいいだろう。

 「○日にクライアントに行くので、クライアントが最近言っていたことをまとめて、どんな課題を持っているか、報告してほしい」というように、部下が考える機会を意図的に作るのである。

 指示されたことはそつなくこなすのであれば、「考える」行為が必要な場合もそれについて試みるはずである。ただもしやり方が分からない場合は、やり方を教えてあげればいい。

 できたときには承認し、うまくできたならばほめてあげる。「この報告書分かりやすくてすばらしい」「こんなにクライアントのニーズをつかんでいるとは知らなかったよ」というように。

 こうすると自分がやったことが評価された、仕事が楽しい、と感じられるようになる。それを積み重ねることで仕事の面白みを実感するようになる。

勉強する習慣をつける

 次に、勉強することを勧めてほしい。「そのままでいい」という人は何をやっていいか分からないという人でもある。本を読んだり、業界のトップの人に接したりすることでやる気が刺激され、何をやるべきかを見つけられたりする。そして、仕事への意欲を持つようにもなる。

 わたしは自分への投資に毎日2時間を割くことで、平凡な人でも業界でトップクラスの人材になれると思っている。

 毎日2時間をどうやってねん出したらいいだろうか。

 (1)1週間は24時間×7日=168時間である。

 (2)(1)から仕事をしている40時間(8時間×5日)と、睡眠時間(8時間×7日)を引くと、72時間残る。

 (3)さらに、毎日の身仕度や通勤のための1日あたり3時間(週21時間)を引くと、残りは51時間これが好きに使える時間

 (4)毎日自分に2時間投資すれば、1週間で14時間となり、さらに37時間残る。自分への投資に2時間割いても、1日あたり平均して5時間以上自由時間が残ることになる。

 毎日2時間勉強して自分の専門性を高める。専門性を高めることは退職後の人生にも役立つ。ある分野で信頼されるような知見を持っていたら、退職後もその分野で食べていくことができる。

 あなたは「何をした人」として自分を覚えてもらいだろうか。「あの人はこういう人」と言われたいと思わないだろうか。そのためにはいくつになっても勉強をしないといけない。このままでいいでは、成長は止まってしまう。学び続けることで自分も成長し、周りにもいい影響を与える。そして組織全体が成長するようになる。

 なお、ここではリーダー自身がロールモデルを示すことが大切である。自分が勉強していないのに、部下にそれを課すのは本末転倒である。自らが勉強し、その姿勢を部下に示すことで部下のやる気も増すはずである。

 仕事の喜びを知り、1日2時間勉強する。そのことによって、「問題ない」という部下の意識を変えてほしいと願っている。


著者プロフィール

細川馨(ほそかわ かおる)

ビジネスコーチ株式会社代表取締役

外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。「ビジネスマンの悩み相談室」は電子書籍でも配信中。「自分は頑張っていると主張する部下に悩む上司」「ぬるい部下に悩む上司」「若い人には横から目線で共感する」(各250円)



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