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企業人よ、もっと怒れ! そして行動を起こせ!生き残れない経営(3/3 ページ)

自分たちの身を守るために傍観を決め込んだり、自己中心だったりしてはならない。自己主張をしなければ、事態は動かない。

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理不尽なことには怒ろう

 さて、翻って企業内に目を向けよう。企業内でも、理不尽なことに対する怒りやその行動に自制心が働いたり、自己主張が抑制されたりしているケースが少なくない。やはり、理不尽には怒り、それを行動に表さなければならない。明確な自己主張も必要だ。まず企業内でも、冒頭部分で触れた日本文化がマイナス面で闊歩する場合が少なくない。

 一方で、質の低い経営がはびこる。例えば、目先の利益にのみ注力して先を見ない、従って明日の事業への投資を怠る経営者、ドラッカーの指摘にあるようにすでに成果の期待できない事業に対して、「もう少しやってみる」とか「自尊心」などの理由から棄てきれずに無駄な投資を続ける経営姿勢、ITは分からないから良きに計らえとばかり無関心を決め込む経営者、経営方針は配下の幹部の方針を集めて、ただそれらを集約してもっともらしく下達する経営者、日本有数の企業でありながら就任が長くなってワンマン化、あるいは企業を私化してしまう経営者、さらに身近なこととして上の指示をそのまま部下に流す下痢幹部、会議好きで会議ばかり開催する幹部、資料好きで資料の分厚さに満足する幹部などなど、実例を挙げるとなるとその選択に苦労するほど、企業経営に害毒を流し続ける経営者や幹部・管理者がいかに多いことか。これら理不尽な経営に対して、企業人は激怒しなければならない。

 それを行動に表さなければならない。激怒し、それを行動に表すことによって、質の低い、淀んだ経営を浄化しなければ、企業は衰退していく。

 問題があるのは、上層部だけでない。企業人はすべからく、基本的に上目遣いだという点も問題だ。企業人には、ほとんど100%上司の意向をうかがう姿勢が身に染み付いている。被雇用者としての宿命だろう。上層部が上記のように質が低下している場合は、一層問題だ。

 しかし企業の維持発展を望むなら、日本文化のマイナス面を意識して否定し、正しいことは正しいとして、敢然と且つ明確に自己主張しなければならない。そのためには、日頃自己研さんをして、自らの考えを確立し、上層部を説得できるだけの力を鍛えなければならない。でなければ、いたずらに自己主張をしても簡単に返り討ちにあう。

 怒りと行動の好例を示そう。産業機械関係の某大企業で、10年ほど務めた社長が退任して会長に就任し、新社長が就いた。しかし会長は代表権もない、取締役でもないのに強烈な院政を敷いた。あらゆる幹部会議に出席し、社長時代と同じように発言をしたので、新社長は実質的にナンバー2だった。最も大きな問題は、人事と金について会長の了解を得ないと新社長は実行に移せなかった。社内には会長を批判する声、新社長を哀れむ声があったが、あくまでも陰の声でしかなかった。役員の間でも、会長に対する疑問や不満や怒りがあった。

 社長交代後1年近く経って、遂に社内ナンバー3の男、某専務取締役が動いた。会長に対して、幹部会議に一切出席しないこと、人事と金に一切口を出さないこと、さもないと社内の混乱が深まるばかりだという内容を書面に表し、新社長と、かねてから会長の子飼いの役員1人を除いた役員全員の血判書ならぬ署名捺印をした要求書を会長に突きつけた。専務たちにとっては、まさに清水の舞台から飛び降りる思い、いや特攻隊もさもありなんという思いだった。

 専務から要求書を受け取った会長は、一読して終始無言だった。それまで毎日出勤していたのに、翌日から休んだ。1週間後に会長から「会長職辞任届け」が郵送されてきた。この場合、通常は専務が会長と刺し違えるつもりだったとか、辞表を懐にしていたとか芝居がかった経緯になるが、専務は事前に弁護士に相談して、最後は訴訟を起こしてでも絶対に後へ引かない準備を周到にして臨んだ。これぞ、真の怒りであり、その怒りを断固として表した行動であり、確固たる自己主張だ。

 私たちは、日本の将来を憂え、企業のあり方を案じ、事態を変えようと思うなら、目に余る理不尽さに対して、日本の文化のマイナス面を敢えて否定し、心底から怒り、正しいと思うことを主張し、行動に表さなければならない。

著者プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。

その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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