日進月歩のIT――どこまで知っておくべきか:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
今や、IT抜きで仕事は語れない。しかし、専門家ではないのだからITの習熟に時間をかけすぎるのも考えもの。リーダーに求められる知識レベルとは?
「本当のところはどうなの?」
「要するに、どういうことなの?」
――多くのメディアが、立場上、書けなかったこと、そして、多くの人が抱いていた「素朴な疑問」に対する答えを、書いたのが「取説以前のパソコンの常識」(講談社)でした。
これは、リーダーを読者対象としたものではなく、あくまでパソコン初心者全般が読者対象です。分かりやすさを第1に、平たい言葉で説明してありますが、短時間で「要するに、どういうことか」が分かる、という点において、リーダーの方も読んで役に立つのではないかと思います。
少々、手前みそな話となりましたが、膨大な情報はかえって「木を見て森を見ず」ということになりがちです。いろいろと情報を収集したら、「要するに、どういうことか」と自分なりに結論づける姿勢は、リーダーにとって不可欠と言えるように思います。
ヒントは、「生の情報」の中にある
わたしがよく質問されることに、「本や雑誌には書いていないそういう知識を、中山さんはどこから仕入れているの?」があります。「メーカーなどの人の話をうのみにしない」「とりあえず、新製品などは自分で実際に使ってみる」など、ポイントはいろいろあるのでしょうが「え、そうだったの?」という気づきは、日常の中で出会う人から教えられることが多いものです。
例えば、以前、わたしが買ったパソコンは、1年で3回、故障しました。当然、メーカーの修理窓口の人に文句を言いました。すると、「このパソコンは、一般用ですから……。故障がイヤなら、ビジネス用のパソコンを選んでください」という言葉が返ってきたのです。これは目からウロコでした。
ゲームや動画はパソコンの高い処理能力を必要としますが、文書作成や表計算は、それほどでもありません。つまり、ビジネスユースのパソコンはそこそこの性能があれば十分です。しかし、故障して使えないというのは絶対的に困る――ビジネス用パソコンの真髄は「高性能」ではなく「堅牢性」(しっかりと安定していて壊れにくいこと)にあることを知らない人は多いのではないでしょうか。
つまり、ビジネス用パソコンは、壊れる確率の低い、信頼性の高い部品を使っている。これに対し、一般用パソコンは、数年おきに買い替えることが前提なので、部品の信頼性は問題にされていないというのです。こんなことは、性能のスペック表を見ても絶対にわかりませんし、メーカーの広報担当者も絶対に教えてくれません。
ITに限らず、日常的な場面で、新たな知識が得られることは少なくありません。ただ一方で、それがガセネタであることが多いのも事実です。「え、そうなの?」という発見があったら、裏を取り、それを価値ある情報にまで高めることが必要なのです。
新聞や雑誌で得られない自分だけの知識、情報を、日々、蓄積していくことの大切さ――リーダーたる者、人と会う機会をなるべく多く設けたいもの。それが、かけがえのない財産となるはずです。
著者プロフィール:中山真敬
有限会社企画工房 代表取締役社長。1989年東京大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。就職情報誌事業部企画、ワーク・デザイン研究室を経て退社し、フリープランナーに。2000年、有限会社企画工房を設立。主な著書に、『たった3秒のパソコン術』(知的生きかた文庫)、『仕事ができる人の10倍パソコン術』(三笠書房)、『グーグル携帯<Android>最強活用術』(朝日新聞出版)、『取説以前のパソコンの常識』(講談社)など。
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