実行に効く計画の技術:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
コンサル現場では、よく「実行できない計画」に出くわします。フォーマット通り、日程や作業工程、予算などを列挙しただけで、それぞれの実現性や必然性が明らかでない計画。これを実行に移しても、間違いなく遠からず頓挫するでしょう。計画は目標を達成するために立てるものです。ここでは、実行に効く計画の立て方を学んでいきましょう。
全体計画の立て方
全体計画は次のステップで進みます。
- 検討対象を洗い出し、フレームワークを決める
- 前提の妥当性を確認する
- はじめての箇所を特定する
では、順を追って説明しましょう。
日程や作業工程、予算などを漫然と書き連ねただけでは目標を達成することはできません。実行が困難に思える項目には、それを可能にする方法を計画に盛り込んでおかなければなりません。リスクに対してもあらかじめ備えておけば、計画の実効性は高まります。このような検討をするのが計画です。
検討すべきことがきちんと検討された計画は、良い計画です。それが、フレームワークに沿ってあとからでも追跡できるよう論理的に組み立てられていれば、関係者は的確なアドバイスを提供できますし、実行チームは計画者の意図を容易に理解できます。
計画には、その立脚点となる前提があるものです。その多くは、計画する対象の内側ではなく、外側に存在します。計画の目的、根拠、背景、計画の周囲にいる関係者の意識などがそれです。計画の詳細化に入れば計画の内側に目が向いてしまうため、前提の妥当性に目を向けるには全体計画のタイミングしかありません。ところが、前提は上位組織や上司から与えられることが多いため、ついつい鵜呑みにしがちです。前提の崩壊は、実行段階に大きな手戻りを引き起こすのです。
「新製品開発で目標性能は達成したのにシェアは低下してしまった」「改革には成功したのに優先事項は他にあった」「コンタクトしていたお客様が実はキーマンではなかった」「目標納期はお客様の期待に沿ったものではなかった」、これらはどれも前提の崩壊です。
与えられたテーマを、隅から隅まで、メリハリなく計画する人がいます。そんな人は、やり慣れた箇所の計画にもしつこく時間をかけます。本来、計画には、しっかり時間をかけるべき項目とあまり時間をかける必要のない項目があります。すべてを同じような調子で計画したのでは非効率ですし、目標達成に向け検討を深めることもできません。はじめての箇所は、時間をかけるべき項目の代表格です。情報が集まりにくいだけにサッと流してしまいたくなるもの分かりますが、それは実行段階に問題を先延ばししているだけです。
先程の鈴木さんを例に考えてみましょう。
鈴木さんは、過去の計画の立て方に何の疑問も抱きませんでした。目標達成のために何が必要なのか、最初にそれを洗い出し検討してさえいれば、こんな状況にはならなかったに違いありません。それを、計画のフレームワークに沿って論理的に検討し整理しておけば、計画の段階に事業部長にレビューしてもらうこともできたでしょうし、実行段階には数字の異常に早々に気付き手を打てたはずです。
前提の妥当性に目を向けていれば、景気動向の変化を完全に見逃すことなど考えられません。今回、予算計画を立てるにあたってのポイントは、数年ぶりの新商品の発売でした。ここに全力を傾けて計画しておけば、傷口がこれほど広がることもなかったでしょう。
2月に出版した「実行に効く 計画の技術」(翔泳社)では、「計画が苦手な人は何がいけないのか」「どう計画すればいいのか」を一冊の本にまとめました。 自動車の仕様計画、プロジェクトマネジメント、事業計画、ビジネスコンサルティングなどの経験から「計画」に共通するエッセンスを拾い出し、整理してあります。
競争社会で活躍するビジネスパーソンには自信をもってお届けできるものに仕上がっていますので、書店で見かけた折には、ぜひ一度、手にとってご覧ください。
著者プロフィール:浦 正樹(うら まさき)
横浜国立大学工学部卒。いすゞ自動車、大塚商会、プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント、マイクロソフトなどを経て、2010年よりエム・アイ・アールのディレクター。キャリアを通じて、一貫して計画マネジメントの導入・実践を行い、その過程で、日本の組織や現場と向き合う。現在は、事業計画からプロジェクト計画まで、その作成と落とし込み、実践フェーズのマネジメントに関するサービスを提供する。
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