極端な「自前主義」が会社を壊す――「何をやるか」ではなく「誰とやるか」で物事は決まる!:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
ビジネスの構想にこだわりすぎて、自分が目指すべきビジネス、やりたいことを実現するのに必要な「人」は誰なのか、という視点を欠いていないだろうか。一人でできることには限りがある。
得意な仲間に100%任せる
では、どうすれば「誰とやるか」という視点に立つことができるのか。
それは、自分が「できないこと」を認めて、「得意な仲間に100%任せる」ことにほかならない。そして、それはまた自分のできないことを認め、仲間の強みを知っていく作業でもある。
僕の場合、「インターネットを活用したビジネスプラン」が書けるかというと、決してそうではない。バシッとメディアの心に刺さるPRのコピーを考えられるわけでもない。
もちろんプログラムなんて書けないし、地道に物事を積み重ねていくような作業も苦手だ。そのうえ、プロジェクトを総合的にマネジメントする能力の未熟さまで明らかになってしまった。
「一体自分には何ができるのだろうか? みんなに助けてもらわないと、まったく前に進めないじゃないか――」
2008年の11月、「もうビズリーチをやめようか」と本気で思うほどに追い込まれていた。だが、「自分にはできないことが山ほどある。みんなに助けてもらわないと前に進めないんだ」と思えたことで、僕の中で何かが変わり始めたのだ。
事実、この後、現CTOの竹内真(たけうち・しん)は、「僕が変わった」と言って参画してくれ、ビズリーチはたった2か月でゼロからβ版公開にまでこぎつけることになる。そして、今では会員数20万人、企業1000社、ヘッドハンター900人が登録するサイトに成長している(2013年5月現在)。仲間の数も今では100人を超えている。
だから、「何をやるか」よりも「誰とやるか」
「この会社で、一番インターネットのことが分かっていないのは僕なんです」
驚かれることも多いが、僕が自分のこと、そしてビズリーチという会社のことを話すときに必ずと言っていいほど使うのがこの言葉だ。
仲間を信じきれずに「何をやるか」ばかり追いかけて失敗した半年と、仲間を信じて100%任せて自分の強みに集中した結果、巻き返しに成功して「誰とやるか」の大切さを痛感した2か月によって、僕のマインドは大きく変わった。
「何をやるかより、誰とやるかが重要である」
このとてつもなく重要な真理に気づいたことで、僕の意識は個人スポーツからチームスポーツへと切り替わる。極端なビジネスモデル偏重型だった考え方は、今や、「最初に優秀な人を集めよう。優秀なやつを集めてからビジネスモデルを考えるほうがいいと思わない?」と人に勧めるまでになっている。
もし、今「夢」や「やりたいこと」に向かって進んでいるものの、「壁」にぶつかってしまった、という人がいれば、一度「誰とやるか」という視点に立って、物事を見つめなおしてみてほしい。
きっと、自分でも思ってもいなかった人物が、あなたにとって大きなヒントを持っていることに気づくだろう。
著者プロフィール:南壮一郎(みなみ・そういちろう)
1976年生まれ。株式会社ビズリーチ代表取締役 兼 株式会社ルクサ代表取締役。
1999年、タフツ大学数量経済学部・国際関係学部の両学部を卒業後、モルガン・スタンレー証券に入社。だが幼少期よりの夢であるスポーツビジネスへの憧れを抑えきれず、2003年に独立、ツテもコネも何もない、ゼロからの挑戦を始める。数多くの出会いと学びを得るも、ITバブル崩壊後の不況の中、まったく仕事に結びつかず、どん底を味わう。
2004年、楽天株式会社代表の三木谷浩史氏に直談判し、「楽天イーグルスの創業メンバー」の座を獲得。チーム運営や各事業の立ち上げをサポートした後、GM補佐、ファン・エンターテイメント部長などを歴任し、初年度から球団事業においては不可能とされていた黒字化成功に貢献する。
2007年、さらなる夢「メジャーリーグの球団オーナーになる」ため楽天を退社し、経営の経験を積むべく、株式会社ビズリーチを設立。当初は「最後は自分でやればいい」という考えに縛られ、廃業寸前まで追い込まれるものの、仲間を信頼し、任せられたことを機に立て直しに成功し、2009年4月に、エグゼクティブ向けの転職市場に特化した日本初の求職者課金型の転職サイト「ビズリーチ」を開設。2013年現在、会員数20万人、企業1000社、ヘッドハンター900人が登録するサイトに成長している(2013年5月現在)。
2012年には、「日本人に世界で働く選択肢を」との想いで、シンガポールはじめアジア各国に自ら飛び込み、同年10月、アジア版ビズリーチ「RegionUP(リージョン・アップ)」を開設。
その他、2010年8月には、プレミアム・アウトレットをイメージしたECサイト「LUXA(ルクサ)」を立ち上げ、分社化した株式会社ルクサの代表取締役を兼任。
著書に、『絶対ブレない「軸」のつくり方』(ダイヤモンド社)がある。
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