自分自身のキャリアを客観的に把握――キャリアを生かして問題にチャレンジ:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
いま市場で必要とされているのはどのような人材なのか。技術だけでなく、管理能力や人柄などを総合的に判断されるという。あなたは求められる人材だろうか。
海外で能力を発揮できる環境作りも重要
テクノブレーンでは中国企業の求人にも取り組んでおり、2013年5月ごろから求人が増えはじめているという。能勢氏は、「例えば日本の会社が海外に進出するために、現地スタッフや工場長、責任者が欲しいなど。海外の企業に人材を紹介する場合には、現地の会社にダイレクトに紹介している」と話す。
「中国企業には、批判もあるが、お互いさまのところもある」と能勢氏。例えば、中国の会社に紹介しても、半年や1年でクビになる人もいる。その人に話を聞くと"技術だけを盗んでとんでもない"と話す。しかし、グローバル展開を考えている企業は、"適切な金額をきちんと払っている"という言い分もある。
能勢氏は「企業と人材を確実にサポートするのがわれわれのミッション。その中で感じたのは、オーナー企業の難しさである。オーナーの一声ですべてが決まるので、人事が右往左往する。こうした会社に良い人材が入社しても、何をしているのか理解できないので不幸になる。そこで良い会社によい人材を紹介することが重要になる」と話す。
企業が何を求めているのか、どのような人材を求めているのかを、きちんと確認しなければ人材スカウトはうまくいかない。また言葉の問題もある。能勢氏は、「日本の人材で中国語が話せる人は皆無であり、また技術用語が分かる通訳も少数である。そのため言葉の壁で失敗することも多い」と言う。
能勢氏は、「海外の会社からの求人は増えており、日本の技術者が能力を発揮できる環境を作ることも人材紹介会社の役目のひとつである」と話している。
自分自身のキャリアを客観的に把握する
今後、日本企業も65歳定年制に移行していくことから、自分自身のキャリアを真剣に考えておかなければならない。
テクノブレーンでは、具体的にはどのような人材に声をかけているのか。能勢氏は次のように語る。「声をかけるのは、"いま忙しい人"や"抜けられると会社が困る人"である。もちろん断ってもらってもかまわないが、ただ話だけ聞いてほしいとお願いする。転職を強制するつもりはまったくない」(能勢氏)。
転職を考えている場合には、家族とのコミュニケーションが重要である。転職できない理由のひとつに家庭問題があるためだ。転職後のアドバイスとしては、大きく3つ。まず1つ目のアドバイスは、3カ月で"すごいね"とか"やるね"と思わせること。最初に認められてしまえば、後は楽になる。
そのためには、社外に出たときの自分の価値観を客観的に把握しておくことが必要になる。能勢氏は、「ヘッドハンティングの話をする場合、ほとんど具体的な仕事の話はしない。仕事のやり方や価値観、人生観などが合うかどうかが重要になる。会社に入って数十年培ったものは非常に大きな財産であり、それが何かを評価する」と言う。
「まずは自信を持ってほしい。その一方、"謙虚であること"が2つ目のアドバイス。日本人が海外の会社で失敗するのは、上から目線である。相手もプライドがあるので、上からの態度では受け入れられない。実績に基づく自信があり、謙虚であれば、どこに行っても成功できる」(能勢氏)。
さらに能勢氏は、「3つ目のアドバイスは、1人でよいから自分を褒めてくれる人、ファンを作ることである。上司でも、後輩でも、同僚でも、家族でもいい。だれかに褒めてもらえるということは大事である。日本人は、失敗を自分のせいだと背負ってしまうことが多い。しかし、チャレンジしただけでもすごいことだと褒めてもらえると、精神的に少し楽になる」と話す。
最後に能勢氏は、「日本は、高齢化や国の借金、原子力発電所など、さまざまな問題を抱えている。しかし問題が多いということは、逆にチャレンジできる幸せも多い。これまでのキャリアを生かせる場面も多々あるだろう。一人ひとりが自分のキャリアとは何かをしっかりと考え、さまざまな問題にチャレンジしてほしい」と話し、講演を終えた。
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