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自律的に成長する組織を実現するのはアドバイスより経験に基づいた学習ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

経験学習サイクルを実践するために、組織としてどのような支援が必要か。「アドバイス支援」「ハゲマシ支援」「キヅキ支援」「ストレッチ支援」の4種類の支援で構成される「成長支援組織診断」を活用し可視化してみる。

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 上林氏は、「これまでの経験を振り返るキヅキ支援を実施することで、ワンステップ成長させることができる。さらにストレッチ支援で、より高い目標に挑戦させる。時系列の関係性において、常にハゲマシ支援により日常をフォローすることも必要になる」と言う。この成長支援組織診断は、以下の32項目を各5段階で評価することで診断できる。

ハゲマシ支援

  • 当たり前に挨拶している
  • 小さなことでも約束を守る
  • コンディションを気にかける
  • 行動を気にかける
  • 相談しやすい環境を作る
  • 日常的に声をかける
  • 聞き役になって否定しない
  • 叱咤激励している

アドバイス支援

  • 仕事を意味付ける
  • ゴールを確認し合う
  • スケジュールを確認する
  • リスクを考えさせる
  • 失敗/成功経験を伝える
  • やってみせる/まねさせる
  • 進捗状況を確認する
  • 改善のヒントを与える

キヅキ支援

  • 振り返りの機会を設ける
  • 自分と向き合わせる
  • 日常の行動を観察する
  • 事実に基づいて褒める
  • 学んだことに気づかせる
  • 行動パターンに気づかせる
  • 小さな成功を思い出させる
  • 積み重ねの重要性を説く

ストレッチ支援

  • 期待ステージを伝える
  • 成長の魅力を伝える
  • 新たな仕事と役割を与える
  • 新たな基準を与える
  • 評価している能力を伝える
  • 周囲の期待を伝える
  • 失敗を恐れさせない
  • 失敗から学ばせる

 これにより、職場の支援における特長を把握することが可能になる。例えば、ある企業のA部署ではストレッチ支援による挑戦により学ばせてはいるが、疲弊感が出ている。またB部署では、具体的なアドバイス支援やキヅキ支援が少なく、今後の成長が期待できないと感じてモチベーションが下がり疲弊していることが把握できる。

 また違った側面としてC部署では、「周囲の期待を伝える」という取り組みを推進することで、厳しい仕事においても、「成長できる」「もう限界とまでは感じない」とみんなが感じることができる。その一方でD部署では、ストレッチ支援を行っていないために、厳しい仕事にみんなが限界を感じていることが把握できる。

 さらにE部署では、コミュニケーションは活性化しており、活気があって仲がよさそうに見えるが、「コンディションを気にかける」「学んだことを気づかせる」ための取り組みが相対的に少なく、表面的な関係であり、成長を後押しできる状態ではない。さらに成長期待が低いという結果も把握できる。

 上林氏は、「この32項目のチェックは、職場支援として何ができるのかを把握する共通言語となる。組織のメンバーがどのように感じているかをマネジャーが客観的に評価することを可能にする」と話している。

自律的に成長する組織実現のためにやるべきこと

 自律的に成長する組織の実現に向けてやるべきこととはどのようなことなのか。上林氏は、「無理と感じる状況を打破する」「成長の期待を感じてもらう」「能力の向上を実感してもらう」という3つの軸で紹介した。

 まず組織のメンバーが、「いまの自分では無理」と感じる状況を打破するための方法の1位が「日常的に声をかける(ハゲマシ支援)」で、2位が「成長の魅力を伝える(ストレッチ支援)」、3位が「周囲の期待を伝える(ストレッチ支援)」である。

 上林氏は、「これにより、日々声をかけ、しっかりと聞くというハゲマシ支援と、成長の魅力や不安の解消の後押しをするストレッチ支援により、組織のメンバーが"いまの自分では無理"と感じる状況を解消させることができることが分かる」と語る。

 次に組織のメンバーに「これから」の成長の期待を感じてもらうための方法では、1位が「成長の魅力を伝える(ストレッチ支援)」で、2位が「失敗/成功経験を伝える(アドバイス支援)」、3位が「叱咤激励をしている(ハゲマシ支援)」である。

 上林氏は、「魅力や経験を伝え、叱咤激励をすることにより、失敗を恐れさせないことが、若手・中堅社員に"この職場でこれからも成長できる"と思わせる秘訣である」と話す。

 最後に組織のメンバーに能力向上の実感を得てもらう方法では、1位が「積み重ねの重要性を説く(キヅキ支援)」で、2位が「事実に基づいて褒める(キヅキ支援)」、3位が「評価している能力を伝える(ストレッチ支援)」である。

 上林氏は、「現状をポジティブに見たキヅキ支援のフィードバックと、評価や期待を伝える挑戦への後押しが、能力向上の実感を促すことになる。自分の職場を見たときに、評価した方が良いと思うポイントを、今後の人材育成に生かしてほしい」と語る。

 自律的に成長する組織に向けてやるべきことの3つの軸における1位から10位までの内容を見たときに、アドバイス支援の内容は成長期待の2位の「失敗/成功経験を伝える(アドバイス支援)」で1回出てくるだけである。

 上林氏は、「技術的に何かを教えるというよりも、コミュニケーションの質を向上させるような支援内容が、組織のメンバーの能力向上に影響することが分かる。能力の向上が技術的な支援だけでないということは、直属の上司だけでなく、ほかの組織のマネジャーでも支援ができるということだ」と話している。


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