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頻発する建設プロジェクト問題――解決の鍵は「コンストラクション・マネジメント」ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

豊洲新市場への移転や新国立競技場の建設など、最近問題 が頻発している。こうした問題の発生を防ぐには、コンストラクション・マネジメントによる「発注者主導型」のプロジェクト支援が不可欠になる。

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正しい建設プロジェクトの進め方

 一般的に建設プロジェクトは、「基本構想」「設計者選定」「設計」「工事発注」「建設工事」「竣工移転開設」という流れで進められる。まず基本構想では、本社が古くなったので建て直すのか、改修で10年持たせるのか、増築するのかといった、基本的なコンセプトやスケジュール、品質、事業計画書、概要書を決める。

 木村氏は、「基本構想の段階が、経営にとって最も重要です」と話す。例えば病院の建設では、まずはヒアリングにより、手術室をいくつ作るか、食堂やナースステーション、更衣室、トイレ、浴室をどうするかなどの要望事項をまとめる。次に、各階の病室の必要諸室をまとめ、これに基づき建築計画図面を作製し、工事予算書、工程表をまとめる。

 基本構想がまとまった段階で、投資金額に問題はないか、求める品質を満足しているか、建物完成時期に問題はないか、起こりうるリスクと対策の準備はしてあるのかなど、発注者が納得するまで練り直す。木村氏は、「ここまでできれば、ゼネコンを問題なく選定できます。しかし、多くのプロジェクトは、基本構想をないがしろにしています」と話す。

 次に、設計と施工には、設計と施工を別々の会社に依頼する「設計・施工分離方式」と、設計と施工を同じ会社に依頼する「設計・施工一括発注方式」の大きく2つがある。さらに後者は、基本設計までは設計会社に任せ、その後をゼネコンに任せる方法と、基本設計からすべてゼネコンに任せる方法の2つがある。

 木村氏は、「約10年前までは、設計・施工分離方式が主流でした。現在は、設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式)が増えています。設計・施工分離方式のメリットは、設計の意図が反映されやすいこと。一方、デメリットは、建設コストが入札まで分からないこと、スケジュールが長期化するリスクがあることです」と話す。

 また、すべてを1社に任せる設計・施工一括発注方式では、コストを早期に把握できることと、スケジュールの短縮が期待できるものの、任せきりにするとコスト面と品質面で若干の不安がある。

 木村氏は、「設計・施工一括発注方式の留意点としては、ゼネコン主導型でなく、発注者が優位に交渉できる資料作りが必要です。発注内示書を交わす前に、制度の高い平面図、詳細な仕様書、詳細な見積書を求めます。合計金額しかない見積書では、後日交渉ができませんが、内訳書を作成することで、後日的確な交渉が可能になります」と話している。

日本とアジアの実例からマネジメントを学ぶ

 マネジメントの実例として、ある研究施設の建築プロジェクトの基本計画から建物完成までの工程が紹介された。このプロジェクトでは、まずは経営方針やブランディングを取り入れた基本設計を策定し、選定資料の作成を行い、指名建設会社を選定する。このとき見積金額だけでなく、受注意欲の高いゼネコンを指名することが重要だ。契約前に契約条件を確認することで、リスクを低減することができる。

 ゼネコンが決まると、次に設計段階に入る。設計段階では、基本計画を設計に反映し、コストと品質のバランスを最適化することが必要になる。設計内容の確認では、当初計画から逸脱している内容を明確化し、課題を分かりやすく図式化することで、プロジェクト関係者のスムーズな合意形成が可能となる。施工段階では、設計変更が必ず発生するので、予算超過を回避するために、施工段階の管理が重要になる。もちろん、品質の管理も重要だ。

 プラスPMでは、2013年にクアラルンプールに会社を設立し、マレーシアやカンボジアなどでもCMを展開している。東南アジア諸国連合(ASEAN)での建設投資を成功させるためには、「日本との違いを知ることが必要です」と木村氏は言う。特に海外では、土地やインフラに関するトラブル、発注形態、完成遅れなどの問題が必ず発生する。土地やインフラに関するトラブルでは、土地登記簿に境界線や建設制限に関する記載がないことが多いので注意が必要になる。

 さらに、電気、ガス、水道、電話などのインフラ施設の費用と期間を契約前に調査しなければならない。「工業団地であっても、安心できないのが実情です」と木村氏。海外に進出する前には、本当に信頼できる人を探すことが重要になる。日系ゼネコンとローカルゼネコンのどちらを選ぶかも、それぞれにメリットとデメリットがある。一般的に、日系ゼネコンは、価格は高いが品質はよく、スケジュールも守る。

 一方、ローカルゼネコンは、価格は安いが日系に比べ品質は落ち、スケジュールを守る意識は低い。しかし、ベトナムのようにローカルゼネコンのマネジメント力が伸びている国もある。どちらにせよ、コストに関しては要求水準を明確にし、品質に関してはCMに品質管理を依頼することが有効だ。スケジュールに関しては、工期遅延のペナルティーを契約書に盛り込むことが必要になる。

 木村氏は、「プラスPMでは、"すべてはお客さまの立場で"という基本理念に基づき、お客さまの成長・発展と全社員の幸せを追求し、最高のサービスの提供と、感謝する心と言葉を持つことを推進しています。そのため、設計会社やゼネコンなどの建築関係者に、配慮はしますが遠慮はしません。すべては、お客さまの事業の成功を願ってのことです」と話している。

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