既存企業の経営者はDXを収益の多角化、経営の安定のために使うべきだ。ポイントはファンとブランド構築:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
柔軟性の高い売り上げの成長や安定につながる「マーケティング視点のDX」4Pモデルとは
デジタル化を脅威に感じる役員や従業員もいるでしょう、時間をかけて浸透させる必要があるデリケートな領域です。またポイントとして全てをデジタル化するのではなく、あえて人間が実施する部分を残すことも重要です。ウルトラチョップラボでは動画を活用して、調理方法やおすすめのワインなどを社長、店長、従業員が紹介しています。また顧客は会員制にして特別扱いすることで関係の強化と維持を図っています。
ウルトラチョップラボ導入で営業時間短縮や閉店でも経営が安定
本書でも取り上げたウルトラチョップは2020年4月より優良顧客を集めたFacebookのグループでの会員制通販ウルトラチョップラボを開始して、現在1000人を超える会員を誇っている。週に一度ラムチョップや、餃子、ワインや調味料の通販を実施しており、2回目の緊急事態宣言発出でも、初回の水準にすぐ戻ったということです。ウルトラチョップラボは人件費などが店舗のオペレーションより少ないので、収益性は高く、また売り上げは営業時間と反比例(営業時間が少ないとEC注文が多い)するので収益的にはどちらの場合も同じような収益が上がる仕組みが出来上がったということである。ウルトラチョップのDXに関して詳しくは本書を参照してほしい。
イモトのWiFiのピンチとノウハウから生まれたPCR検査の先駆者にしたんクリニック
イモトのWiFiを展開するエクスコムグローバル・グループは、医療法人社団直悠会から医療業務以外の業務(医療事務、マーケティング業務、TVCM制作、広報業務、コールセンター業務など)を一式で受託し、にしたんクリニックの経営に深く関与しています。
西村誠司社長は筆者がITベンチャー“デジプリ”を経営していたときの経営者仲間であり、Facebookの友人向けに12月17日に以下の投稿をしています。
“海外渡航がほぼすべて消滅し、イモトのWiFiが窮地に陥る中、8月24日に始めた、にしたんクリニックのPCR検査が、サービススタートしてから115日目の昨日、1日の検査申込み件数が1万件、1日の売上げが1億円を超えました。業態は全く違いますが、イモトのWiFiで培ったマーケティングノウハウをフル活用しています。”
にしたんクリニックは薬局のウエルシアのPCR検査受付窓口も確保し、1月14日には累積検査申込件数が40万件に達したとのことです。また最近では新型コロナ感染症の最前線で戦う人を支援する「看護師支援プロジェクト」を通じて20万円を500人の看護師に還元する取り組みを実施するなど新たなブランド確立にも動いています。(1月27日時点で累計検査申込件数が50万件に到達)
この記事には間に合わないが別の機会があれば取材を申し込みじっくり話を聞きたいと考えています。
にしたんクリニックのPCR検査は、海外渡航の減少とともに減ったイモトのWiFiの売り上げを見事にカバーし、それ以上の売り上げ(イモトのWiFiの年間売り上げは2018年度は84億円程度)をたたき出している。今後海外渡航が戻ればWi-Fi事業が復活してくるであろうし、PCR検査に加えて陰性証明書の提供も開始しているため、リスクの少ない体質になったのではないでしょうか。
本書のフレームワークを通じて皆さんも柔軟性の高い売り上げの成長や安定につながるDXを実現していただき、日本の社会・経済の成長に寄与されることを願っております。
著者プロフィール:江端浩人(エバタ ヒロト)
iU情報経営イノベーション大学教授 江端浩人事務所 代表、エバーパークLLC 代表
米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでiマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長、アイ・エム・ジェイ執行役員CMO、ディー・エヌ・エー(DeNA)執行役員メディア統括部長、MERY副社長などを歴任。現在はエバーパークLLC、事業構想大学院大学教授、および江端浩人事務所代表として各種企業のデジタルトランスフォーメーションやCDOシェアリング、次世代デジタル人材の育成に尽力している。 メンバー7000人次世代マーケティングプラットフォーム研究会主宰。2020年開学の情報経営イノベーション専門職大学教授に就任。著書に2020年10月「マーケティング視点のDX」(日経BP社)他。
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