学びを最大化する TTPSマネジメントとは:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
新しいことに取り組む場合、まず巨人の肩に上って全体像を把握し、その次に自分自身のオリジナリティーを発揮して、さらに高い場所から物事を見られるようにする。
最近はさまざまな情報がWebで検索できます。「Note」や今話題の「Clubhouse」「Facebook」や「LinkedIn」などもあります。私のように書籍を書いている人もいます。そのような人にアクセスする難易度は昔に比べると、極めて低くなってきています。仕事上のネットナンパできるかどうかは、有効な情報にアクセスするための必須スキルの一つだと思います。
目を社内に向けると、会社によってはタレントマネジメントを行っているケースもあるでしょう。この事は、この人に聞け!という個人別の仕事上の特技や経験などをデータベース化しているケースです。このようなデータベースが社内にあれば、誰からTTPすれば良いのか一目瞭然です。あるいは、データベースが無いとしても、社内で事例発表会や表彰制度などがある会社も少なくないでしょう。これで目星をつける事も可能です。
スーモカウンター時代のTTPS
私がかつてリクルート時代に担当していた「スーモカウンター」では、接客を17のステップに分割し、それぞれのステップにおいて顧客の重要度と満足度を測定していました。その17のステップそれぞれについて顧客満足度が高いメンバーを明確にして、そのメンバーがどのように接客しているのかムービーを作成していました。
全てのメンバーは、自分の接客について、顧客満足度から強み、弱みを数値で把握できます。弱みを強化する場合に、誰の接客をTTPすれば良いのかが分かっています。しかも、その人の接客をムービーで見られるので自主学習ができるわけです。
これらの仕組みにより、TTPする風土ができていました。ちなみにこれは接客だけではありません。資料の作成の仕方、出店計画の作り方、採用活動の仕方など、さまざまな場面でノウハウがまとめられていました。
結果として、新しく組織に入った新入社員や中途採用者が、早期に立ち上る可能性が高まります。早く立ち上がり、成功体験を持てるわけです。従業員満足度も上がり、離職率が下がります。さまざまな場面でTTP活用している組織は、イケテイル組織になれる可能性が高まります。
ハイパフォーマは、自分が好業績を挙げられている理由を自覚していない
私たちがスーモカウンターでTTPをする中で、見つけた典型的な失敗例を紹介しましょう。具体的にTTPする内容を把握する際に、ハイパフォーマにインタビューをするのだろうと早合点をする人がいます。これが実はうまくいかないのです。
どうしてでしょうか。大半のハイパフォーマは、自分が好業績を挙げられている理由を自覚していないのです。不思議ですよね。
理由はシンプルです。ハイパフォーマが好業績を挙げているポイントは、実は彼らが無意識にできている箇所にあることが多いのです。息をするようにやっている箇所が好業績のポイントだったりするのです。彼らにとっては、あまりに自然な行動なので、それが好業績のポイントだとは気付かないのです。
では、どうすれば良いのか。ミドルパフォーマ(平均的な業績者)と対比すれば良いのです。ハイパフォーマだけがやっている箇所、あるいは逆にやっていない箇所。または順番の違いなどに好業績の秘密があり、これは第三者が観察しないと分からないものなのです。
この本ができたきっかけ
最後にこの本が出版できた話を紹介させてください。
この本は著者の一人の肱岡優美子さんが出版社の出版塾に通ったことがきっかけでした。肱岡さんは、私と同じく著者の一人の鈴木利和さんがスタートしたTTPS勉強会の事務局メンバーの1人です。出版塾では、講義の最後に「本の企画」を提出します。そのテーマとして「TTPS」を取り上げても良いかと打診がありました。肱岡さんは仲間なので、当然OKです。そしてその本の企画が最優秀賞に選ばれたのです。最優秀賞の副賞が本の出版でした。そんなきっかけで、私にとって10冊目のこのTTPSマネジメントが世に出たのです。
TTPSは仕事だけではなく、学校でも活用できます。この本を出版したことをきっかけに現在全国の先生方と学校での教育をTTPSするための勉強会もスタートしました。世の中に着実にTTPSの輪が広がっています。みなさんもぜひぜひ、さまざまな場面でTTPSを活用してみてはいかがでしょうか。
著者プロフィール:中尾隆一郎
中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長兼 旅工房(6548)取締役 LIFULL(2120)取締役 LiNKX 監査役
リクルートに29年間勤務。リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートワークス研究所副所長を歴任。
2019年3月中尾マネジメント研究所を設立。世の中に役立つサービスを提供×大きな成長を志向×中尾が関与することでその実現度合いが高まるテーマ(主に経営マネジメント強化)×経営者と直接仕事をする案件に絞ってビジネスをスタート。
専門は事業執行、マネジメント全般、事業開発、マーケティング、人材採用、組織創り、KPIマネジメント、管理会計など。良い組織づくりの勉強会(TTPS勉強会)主催。
著書 『最高の結果を出すKPIマネジメント』(フォレスト出版)10刷。『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)6刷、『自分で考えて動く社員が育つOJTマネジメント』(フォレスト出版)、『最高の結果を出すKPI実践ノート』(フォレスト出版)』『最高の成果を生み出すビジネススキル・プリンシプル』(フォレスト出版)など。ビジネスインサイダージャパンで毎月「自律思考を鍛える」をテーマに執筆中。
1964年5月15日生まれ。大阪府出身。1987年大阪大学工学部卒業。89年同大学大学院修士課程修了。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 既存企業の経営者はDXを収益の多角化、経営の安定のために使うべきだ。ポイントはファンとブランド構築
- たくさんの仕事を抱えているのに、なぜまるでストレスがないのか〜「何でもメモ」して外に出すというシンプルな方法
- 自分で考えて動く社員が育つOJTマネジメント
- 『50歳からの幸せな独立戦略』で定年後は「ひとり社長」を目指せ
- 書くのが苦手で嫌いだった私が、なぜ書けるようになったのか
- 最高の結果を出すKPI実践ノート
- リモートワークの広がりで問われる『本物の「上司力」』
- マーケティングは、モビルスーツである
- 嫌いな人にも読んでもらえるコンプライアンス教材
- サイバーエージェントではなぜ、突き抜けたリーダーが育つのか〜経営人材と新規事業が続々生み出されるには、理由があった
- コロナ氷河期は青黒さとマネジメント力を鍛えて乗り越えよ
- 子育て世代支援からの地域創生
- 成城石井が他のスーパーと違うワケ――スーパー冬の時代に「10年で売上高2倍」の理由
- コロナ禍を乗り越える2つの観点
- あなたの「感性」は武器になる。これからの社会で生き抜くためのキャリア戦略
- 狭域での事業を通して思うコミュニケーション方法
- できる40代は、「これ」しかやらない
- 想像以上の答えが見つかる思考法の作り方