自分で考えて動く部下が育つすごい質問:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
コミュニケーションの様式には、指示、命令、説明、激励、期待、共感、指摘、質問、示唆、叱責などがあり、部下のタイプ、育成場面に応じてどれがもっとも効果的かを判断する必要がある。
分かりやすいので、最初の営業部門の例をあげましたが、同様のタイプは技術部門にもスタッフ部門にも少なからずいます。いわゆる「詰めが甘い」タイプで、タスクが8割、9割進捗すると、「もう完了した」かのような気持ちになって、最後の最後に緊張がゆるみミスをしてしまう技術者やスタッフはどこの部門にも一定数いるものです。
徒然草に登場する有名な「功名の木登り」が、失敗は油断する時に生まれるということを諭していますが、この教訓を学んで欲しい人でもあります。
さて、こうした部下・後輩に対して、どのような育成をしていけばいいでしょうか?
「やる」ことを絞ってあげる
実は30年前も、20年前もこういうタイプの人は必ずいました。理由は性分というか、多分に性格的なところからくることが多く、代々の先輩社員や上司たちがさまざまな方法を試してきました。その中で、もっとも効果があったのが、「やること」を絞ってあげて、集中体験をさせることです。
それをその部下や後輩に働きかける言葉にすると:「思い切って、〇〇だけやってみようか」という言い方になります。
「〇〇だけ」と限定されることによって、私たちは「そのくらいなら、やってみるか」「その程度なら、これからでもできる」「その程度なら、これからでも間に合う」とポジティブに行動を起こせるようになるのです。
この短いフレーズには2つの心理学の原理が用いられています。
まずは、「小分け」の技術。「〇〇だけ」と小分けされると「このくらいなら自分でも十分にやれそうだ」という希望が見えてきます。希望が見えてきたとたんに、モチベーションが高まることから、これを心理学では「希望の法則」と呼びます。
もう一つは集中体験です。部下や後輩の育成に際し、「成功体験」が重要であることに異論のある人はいないでしょう。しかし、その反面、今日、そう簡単に「成功体験」が実感できる機会は多くはありません。そこで登場するのが、集中体験。
実は何かに集中して「やり切った」という体験で得られるものは、「成功体験」と同じなのです。それを繰り返すことによって部下や後輩は集中体験を学習していきますので、「やり切る」にたる行動を起こすようになります。
他に、切り口を変えて、本人に考えさせる:「“やり切った”って実感するためには、あと何が必要かなぁ?」問いかけもいいでしょう。
さらには、他の人のベンチマーキングをさせたり、見本、手本から自分との違いを考えさせたり:「“やること”と“やり切ること”の違いって、5年目のSさんを見ると分かりやすいから、その行動を見て感じたことを報告してくれる?」という方法もありますので、ぜひ、使ってみてください。
著者プロフィール:大塚寿(おおつかひさし)
1962年群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。リクルート社の伝説の営業パーソンが講師陣に名を連ねるオンライン研修「営業サプリ」において「売れる営業養成講座」の執筆・総合監修を務める。
著書に「惜しい部下を動かす方法ベスト30」(KADOKAWA)、累計28万部のベストセラー
「40代を後悔しない50のリスト」(ダイヤモンド社)、「できる40代は、『これ』」しかやらない(PHP研究所)など多数。
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