「グローイング・サイクル」を回すことで組織の全員が戦力になる:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
かつて日本マクドナルドの「ハンバーガー大学」で学長を務め、「ユニクロ大学」でも実績を残した有本均氏。現在はホスピタリティ&グローイング・ジャパン会長として、多くの企業の人財育成をサポートする。目指すのは「全員を戦力にする」こと。そのための方法について、一端を紹介してもらおう。
マクドナルドとユニクロが優れているのは、特にこの「要求する」を徹底していることです。決して、教えて終わり、あとは自分でやって、と放置していません。要求水準が明確であり、それをルールとして共通化しているために、どの店舗に行っても同じオペレーションができます。
そして、その結果をきちっと公正に評価することも不可欠です。その人の良いところを伸ばし、ダメなところを直す。人財育成には、この2つしか方法はありません。その点で評価というのは、その人の良いところ悪いところに直接アプローチするもので、極端に言えば教育をしていなくても評価だけしていれば、育成という目標の半分を達成できるのだと思います。
それほど大事な評価について仕組みによってではなく、経営者が、あるいはマネジャーが「勘」でやっているようなケースもあります。しかしながら、仕組み化された公正な評価がなければ、人は成長しないでしょう。
「評価を上げるために頑張る」を否定してはいけない
育成の50%は「教育」で、50%が「評価」というのが私の考えです。評価という見返りがなければ、人は一生懸命に仕事をすることはありません。やる気が高まるのは、公正な評価があるからこそです。いい評価をされたら人はもっと頑張るでしょうし、評価が悪ければ、次は挽回しよう、と考えるものです。
それを一歩進めて考えたときに、私は「評価を上げるために頑張る」ということを否定してはいけないと思います。
「評価されないことは全然やらないんだよね」とマネジャーが愚痴を言うのは間違いです。むしろ評価されないことはしない、というのは自然なのです。その業務をちゃんとやってほしいなら、評価項目に入れるべきなのです。
「お店をきれいにすれば評価が上がるんだな」と分かれば、誰もが清掃を進んでやるでしょう。そのように会社がやってもらいたいことを意識して評価項目を作ることが重要です。命令だけでは人は動きません。
この評価についてもマクドナルドとユニクロは、しっかりマネジメントをしています。働く人はみんな評価を意識していますし、評価を上げるために頑張る、という姿勢で仕事に取り組んでいます。そこには会社として、人の善意に期待してはいけない、という思想があるからでしょう。
採用に苦労しているサービス企業は多いでしょう。人が採れない、ということは「選ばれていない企業」であることを意味します。採用と定着に課題を抱える企業の方は、そのことに気付く必要があります。
人に選ばれる企業になるためには、「人が成長する企業」になる必要があります。優秀な人だけを採用するというのは、どんな企業も望むことだと思いますが、みんなが望むことであるだけに至難の業。人財が取り合いになるからです。
発想を変えて、「入った人を全員育てる」ことを考えるべきではないでしょうか。本書は、そのためのヒントを提供します。
サービス業における人財育成を念頭に置いて書いたものではありますが、実のところ本書で示した育成の方法は、どの業種にも通用するものです。「教育」と「評価」の重要性を認識してグローイング・サイクルを回すこと。それは成長のための普遍的な手法であることを確信しています。
著者プロフィール:有本 均(ありもと ひとし)
1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルドに入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である 「ハンバーガー大学」の学長に就任。
2003年、ファーストリテイリングの柳井社長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」の部長に就任。その後、バーガーキング・ジャパンの代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。
マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を生かし、世界中のサービス業の発展を目指す。著書に「どんな人でも一流に育つしくみ」(2013年 商業界)、「全員を戦力にする人財育成術」(2020年 ダイヤモンド社)
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