50代 「仕事に困らない人」は見えないところで何をしているのか:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
いつ、なんどき声が掛かってもいいように常に準備をしておく。どんな準備をしておけばいいのだろうか?
これは、人間関係の秘訣です。そうしないと、断られた時に、落ち込んで諦めたり、ムリにゴリ押ししてますます嫌われたりします。
仕事は、能力ではなく人間関係のウエートが大きいのです。採用する側は、能力があって人間関係に問題ある人と、能力がなくて人間関係のいい人がいる場合、後者を選びます。
人間関係のいい人は、これから能力を入れられます。能力のある人は人間関係を拒絶します。「自分は仕事ができる」と思うと、人間関係を学ぼうとする気持ちがなくなってしまうのです。しかも、これからの時代、能力でAIには勝てません。
これは部下の立場です。上司も、能力のある人と人間的に魅力のある人とに分かれます。部下が辞める理由は、「上司の人間的魅力がないから」という一点に尽きるのです。
「仕事も会社も好きなんだけど、ちょっと人間関係がね」と言うのはウソです。ホンネは、上司に魅力がないからです。上司に魅力がある限り、部下は辞めません。
「なんで辞めるんだ」と言っている時点で、その上司には魅力がありません。そういうことを言うから、部下は辞めていくのです。断られたら、プランBを考えることです。
誘われる時は、一瞬。誘われなければ、何かが足りない。スカウトされる人は、ふだんからコツコツ準備している。
スカウトは、ドラマやアイドルの世界の話だけではありません。実際、アメリカなどではパーティーで知り合った人に「うちの会社に来ない?」と言われます。
私は博報堂時代、リクルートの担当をしていました。リクルートの宣伝企画部に伺う時はエレベーターに乗ります。リクルートは自由な会社で、当時は役員も一般社員と同じギューギューのエレベーターに乗っていました。
ある時、私が乗ったエレベーターに眼光の鋭い人が乗っていて「ヤバい人がいるな」と思っていると、宣伝企画部の人が「中谷さん、うちの役員の○○さんです」と紹介してくれました。その役員の人に「君、うちに来ないか」と、ひと言目に言われました。まだなんの話もしていません。これがスカウトです。
私がアルバイトでライターをしていた時も、企画をしている有名な人のところへ行って取材が終わった後、「君、うちに来ないか」と言われました。スカウトは日常茶飯事に起きるのです。
「仕事がない、ない」と言う人は、受け身の姿勢だということです。雇う側からすると、「優秀な人材がいない」と探しまわっているのが現状です。スカウトは就職活動の時期だけではないのです。
採用される方法として、売り込みはありません。売り込みの企画も採用も、当たる確率は低いのです。
カルチャーセンターの事務局の人は、「売り込んでくる人で採用するのは100分の0です」と言っていました。100分の0は、1000分の0でもあります。カルチャーセンターの人は、いろいろな講演会に顔を出して、必死に講師を探しまわっています。自分たちが見に行った中で、採用するのは100分の1です。
一方、売り込んでくる人の採用は100分の0であり、1万分の0です。売り込まなければ採用された可能性があっても、売り込んだがために「売り込みか」と思われて、採用はなしになります。
実際は、売り込みで成功した例もあります。その人は、売り込みのマイナスを上回る力があったのです。または、すでに採用が決まっていて、結果として売り込んだだけにすぎなかったということです。そういうとてつもない能力がない限り、売り込みは損です。
スカウトは一瞬です。リクルートの宣伝企画部は2階にありました。私がリクルートの役員にスカウトされたのは、1階から2階までのエレベーターの中での出来事です。裏を返せば、一瞬で誘われなければスカウトはないということです。
原因は、よく見てもらえなかったからではありません。何かが足りないのです。
スカウトされる人とされない人は、持って生まれた何かが違うわけではありません。スカウトされる人は、ふだんからコツコツ準備をしていて、出会って一瞬で見抜かれる何かを持っていたということです。
スカウトされない人は、長い間、面接の日が決まっていて準備する時間があることに慣れてしまっているがゆえに、突然出会った時の対応を何もしていないのです。スカウトされるためには、24時間、365日、全ての1分1秒が面接だという覚悟でいることが大切です。「今あの人がスカウトしている」「この人が面接官」というのも分からないまま起こるのがスカウトです。
ふだんから全てのことを準備して、自分をスカウトしてくれる人にいつ出会っても大丈夫なようにしておく必要があります。オーディションの前日に美容院やエステに行ったり、洋服をつくりに行ったりしても間に合わないのです。
出会った時のために、今から準備しておくことです。
著者プロフィール:中谷彰宏 作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。セミナー、ワークショップ、オンライン講座を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『50代仕事に困らない人は見えないところで何をしているのか』(青春出版社)など、1090冊を超す。
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