“人”をエンパワーメントするDXで不動産業務を革新、週休3日を実現した秘訣とは:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
創業53年、鳥取県でトップシェアを誇る不動産会社ウチダレック。週休3日を導入するなど、DXで業務改善を実行し営業利益を2倍にするという結果を出している。いかにして実現したのか。
DXを推進するうえでの「コツ」
ウチダレックがDXを推進する際、どのように改革を進めていったのだろうか。そのためのポイントが以下の4点だ。
1、現状業務の分析から
・現在の業務とシステム、Excel、紙の相関図を書く
・何のITのツールが必要かを考え、1つのシステムにまとめる
「ウチダレックでは業務ごとに異なるツールを使っていたため情報が分散しており、ステータス管理や情報共有ができていませんでした。相関図によって、売上管理、マーケティング分析のたびに紙やExcelを多用しなければならないという問題点が浮き彫りに。業務引き渡しのためのツールを統一し、ステータス管理と統合したいという理想像が描けるようになりました」(内田氏)
2、スモールスタート
・取り組みやすいところから
・成果は数字で共有
・成功したら他の部署へ横展開
「まずスケジュール管理からデジタル化をはじめました。ホワイトボードで共有していた社員のスケジュールを、サイボウズによってスケジュール管理するようにしました。実際に使ってみてその便利さを社員も実感したことで、デジタル化の成功体験となりました。その後、同じホワイトボードで管理していた業務をデジタル化する、というように横展開しました。また、実施したデジタル施策の結果を数字で社員に共有することで、『紙の情報がなくなっても業務に支障ないんだな』という意識が組織に浸透し、前向きに取り組んでくれるようになりました」(内田氏)
3、徹底的に
・ある程度の強制力は必要
・組織をまたいでの業務組み換え、組織の再編が必要になることも
「サイボウズを導入しても、最初はみんな入力してくれなかったんです。それで、ホワイトボードを撤去して、強制的に入力する状況を作りました。行動を変えるには仕組みを変えなければならないので、ある程度の強制力は必要なプロセスだと考えています。また業務を見える化していくと、営業でやっていた仕事を総務課でやった方がいい、というようなことも分かってきます。そういった業務や組織の組み替えには、どうしても意思決定のできるトップの関与が必要です」(内田氏)
4、慣習にとらわれない
・データから当たり前を見直す
「ウチダレックでは社員の車での物件案内はやめ、全てタクシーの運転手さんに物件に案内してもらうようにしました。成約率を測ってみると、社員の物件案内とタクシー案内での成約率は変わりませんでした。案内をしないことで生み出された時間で、社員が接客できるお客さまの数が増え、営業生産性が2倍になりました。また、不動産業界では水曜日休みというのが一般的ですが、来客アンケートとデータをもとに金曜日休みに変更したところ、それが他の不動産会社との差別化ポイントになり、来客数が増えました。また、以前は2店舗ありましたが、1営業日あたりの1人の社員の接客数を出してみたところ一日平均0.87人ということが分かりました。この状況であれば常時2店舗を運営する必要はないということで、2店舗目は繁忙期のみの営業としました。2店舗目の2階を賃貸物件として貸し出すことで、収益も出るようになりました。また店舗が減ったことで、週休3日も可能になりました」(内田氏)
これまでの常識をうたがい、社員による物件案内をやめ、営業日を変更してみる。慣習だからといって無条件に受け入れず、データに沿った施策を実行してみることが、業務改善、利益向上につながっているという。DXと一言で言うのは簡単だが、変革には抵抗が伴う。成功させるには、外部ツールや外部コンサルを活用し、トップ自らが変革の必要性を理解して、慣習にとらわれずに徹底的に行うことが必要になる。「人に着目」し、社員が『1.1』の上機嫌な状態でいられるように業務を改革してきたウチダレックの事例は、大いに参考になるのではないだろうか。
内田氏は講演の最後に、ウチダレックのすすめる不動産DXの目的を語ってくれた。
「不動産業の価値を高め、売り上げを伸ばし、地元に、社員に、もっと愛される不動産業に」不動産業のDXを進め、地域にその利益を還元し、地元を、そして社員を幸せにする。DXのキーポイントは、どこまで行っても“人”にあるといえるのかもしれない。
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