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“利他の心”を徹底し、100億円を成し遂げたお客様本位の理念ドリブン経営ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

富山など北陸三県を中心に段ボールなどの梱包事業を展開するサクラパックス。経営理念を中心に、利他の心で年商100億を成し遂げた橋本淳社長が、理念経営について講演を行った。

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売上数字ではなく、理念で評価。利他の心を何よりも重視

 売上目標で評価されないサクラパックスでは、社員の評価は“理念”によって行われる。

 「重要なのは納得性とやりがい向上です。毎月1回の評価面談を行い、十数項目において、本人評価と上司評価の照らし合わせを行います。年間12回、その面談を繰り返すことで上司と部下の評価が一致し、納得性が高まるのです」(橋本氏)

 このような理念経営を行うサクラパックスには、3つの採用基準がある。「利他の心がある人」、「素直で謙虚な人」、「行動力のある人」。会社の理念の根幹である利他の心を持つことが、何よりも重要だという。利他はすなわち、お客様本位ということでもある。この理念を浸透させたことで、サクラパックスの売上は大きく伸びた。

 「以前は段ボールのみを扱っていたのですが、お客様のニーズを掘り下げ、段ボール以外にも樹脂製の箱を作ったり、包装資材を扱うことになったり、梱包事業なども始めました。また、食品や工芸品を扱うお客様の“もっと商品が売れてほしい”という声を聞き、北陸三県の食品や工芸品を集めた“the Made In”というお店を三井アウトレットパーク 北陸小矢部内にオープンしました」(橋本氏)


北陸三県の食品や工芸品を集めた“the Made In”

Social Goodは当たり前。誰かを笑顔にするための企業活動

 サクラパックスでは、社会の「公器」としての会社という意識のもと、段ボールや梱包の専門家としての社会貢献、Social Good活動も続けている。2016年に起こった熊本地震の際には、「熊本の人々を元気にしよう」と『熊本城組み建て募金』を実施した。熊本城の組み建てキットを1個2000円で販売し、「組み建てるための時間、組み建てた熊本城を飾っておくことも含めて熊本城の復興を応援する」というプロジェクトで、その売上全額を熊本城復興のために寄付している。合計2万2500個を販売し、募金総額は4800万円、組み建て時間の合計は1万3800時間となった。このプロジェクトは2017年度グッドデザイン賞を受賞し、合わせて「グッドデザイン・ベスト100」にも選出されている。


熊本城の復興を応援

 また、段ボールの専門家として、段ボール製品での社会貢献活動も続けている。被災した際に、段ボールを使って避難所生活を快適に過ごすための、『避難生活のQOLを考える「段ボールでまもろう」』という情報提供や、段ボールベッドや、段ボールを使ったパーテーションの販売なども行っている。


段ボールを使って避難所生活を快適に過ごす

お客様を笑顔にするために、そこまでやるかと言われるまで従業員を大事に

 お客様を笑顔に、社会を笑顔にするためには、社員も笑顔でいなければならない。橋本氏は「社員は顧客を、社長は社員を第一に」という考えのもと、社員のやりがいや働きがいを向上させるためにも尽力している。給与は業界水準の10%アップを目指し、昨年は5%の給与アップを実施。今年も4%アップを目標としている。

 「また、社員を表彰する大会を行っています。非日常のサプライズを感じられるアカデミー賞のようなイメージで、社員全員から拍手され、花束をもらうということで、社員に仕事へのやりがいをもってもらいたいと考えています。他にも、社員同士でありがとうというメッセージを伝えあう『ありがとうカード』活動をしており、大体月に8000枚くらい社内で流通しているようです。また、350人の社員の名前を覚えて社員を名前で呼ぶことを徹底しています」(橋本氏)

 個人として社員の存在意義を認めることで、「あなたがいるから会社がなりたつ」というメッセージが伝わる。社員のプロフィールや趣味などを覚えて、飲み会の際にその話をすることで、社員は自分が認められていると存在意義を感じ、仕事のやりがいがアップしていく。

 このような、お客様を笑顔に、社員を笑顔にする理念経営を実施した結果、サクラパックスは大きく発展していった。段ボール製造からおセレクトショップまで、取扱商品は5倍に増加。さらに、売上は160%アップの100億円を達成。ユニークな認知も高まった。自己資本比率も83%となり、会社の体力も高まったという。

 橋本氏は「経営で大事なことはそこまでやるかと言われるまでやることです。秘策はなく、ひたすらやるのみです。亀のようにじっくりじっくりと浸透させていくことが大事だと考えています」と経営についてもっとも重要な点を語り、講演を終えた。

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