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“人の心を動かすプロ”である管理職が理解すべき「部下全員が活躍する上司力5つのステップ」ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

ダイバーシティが進んだ現在、職場を取り巻く環境も、20年前とは大きく変わっている。以前とは違い、「右向け右」という画一的な号令では部下が動かない現在、管理職に求められる新たな「上司力(R)」とは何なのだろうか。

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部下全員が活躍する上司力 STEP3 協働意識

 次に必要なのが、一人ひとりの強みを活かし合う「協働意識」の醸成となる。個々の部下を尊重し、しっかりと1on1面談を行ってキャリアビジョンや持ち味を理解し、その持ち味に即した「あなただからこそ」の役割を提案し、組織図を作るのが、上司の大切な仕事になってくる。個々のメンバーが助け合い、連携し合う醍醐味を実感できる仕掛けが重要だ。

 「部下の一人ひとりに、“足で稼ぐ現場主義者”“ミスター商売人”“かわいげ力営業”といったキャッチフレーズをつけてみましょう。このキャッチフレーズは、部下のことを分かっていないとつけられません。あなただからこのキャッチフレーズ、あなたにしかこの役割はできないということを提示してあげると、部下も組織の目的と自分の役割を結びつけることができ、メンバーを助けるために、自分がこの役割をやらなければという動機付けもなされていきます」(前川氏)

 上司が部下に期待をすれば、その期待通りに部下は変わっていく。部下を肯定し、ありのままを認め良い期待をすれば「ピグマリオン効果」で部下は成長していく。しかし、部下を否定し、できないと決めつけていれば「ゴーレム効果」で部下のパフォーマンスは低下していく。部下を育てるには、組織に帰属し認められていることを求める社会(帰属)欲求と承認欲求を満たすことも大切になる。

 「上司は、部下一人ひとりに必ずいいところがあるのだと信じましょう。そのいいところを生かせば必ず良い仕事ができ、活躍・成長できると、肯定的に部下と向きあいましょう。こうした人の心を動かす心理学の基礎を学び、部下の育成に生かすようにしましょう」(前川氏)

部下全員が活躍する上司力 STEP4 切磋琢磨

 環境変化の激しいこの時代においては、現場の社員一人ひとりが自律的に工夫しながら、マーケットやお客さまの変化に応じて業務を改善していく必要がある。

 個々の日々の気付きを業務フローの進化に反映することを、上司が奨励するのも重要だ。部下が自身の役割に納得したら、それからの創意工夫は任せなければならない。部下から提案が上がってきたら、それが組織と役割の目的に合致していれば、思い切って任せる勇気が必要になる。そうやって部下に任せていくことで、チームが変わっていく。

 部下には“作業”ではなく“仕事”を任せなければいけない。同じ“作業”をやっていても、その作業の目的を理解していれば仕事のモチベーションを高く持つことができる。この“作業”を“仕事”に変更するための3つのステップがある。上司から部下に作業の指示を出した後に、(1)部下から作業の目的を「質問」させて双方向のやりとりで納得させ、(2)部下から工夫した作業の改善箇所を「提案」させる。そして(3)部下に上司との「相談」のうえで承認を得させる。この3つのステップを回していくことにより、部下のモチベーションが上がり、成長し、自律的なチームが生まれていく。

部下全員が活躍する上司力 STEP5 次につながる「評価納得」の獲得

 業績評価というのは仕事の一時期を切り取った結果論であり、この良し悪しは部下のモチベーションとはイコールではない。期初の動機形成のタイミングでその目的に納得し、自分で創意工夫しながら仕事を行っていれば、部下は当事者としてその結果に納得できる。業績目標のマイルストーンを分かったうえで行っていれば、結果が良くなくても部下はその評価に納得できるはずだ。

 「厳しい評価であっても、それは一つの通過点。次の期のチャレンジへ向けて部下自身が納得感と見通しを持てているなら、前向きな対話を続けていくことができます。期末に行う人事評価の面談で、部下が上司の評価の低さに納得できず、モチベーションを下げるというのは、既にマネジメントに失敗しているといえます。日常的にしっかり対話ができていれば、業績評価の面談で厳然と結果を伝えても納得してもらえます。マネジメントが成功していれば、客観的な業績評価の良し悪し自体は素直に受け入れてもらえるでしょう」(前川氏)

「やる気」の構造を理解し、真のリーダーシップで人の心を動かす

 部下全員に活躍してもらうには、内発的動機付けが必要となる。これまでの会社のモデルは、ポストや報酬などの外発的動機付けで部下に仕事をやらせてきた。設定された目標を達成するよう、上司が部下を説得し、仕事を行わせていく。上司が部下を統制してコントロールしようとすると、部下には“やらされ感”が蔓延し、仕事へのエンゲージメントも下がっていく。

 内発的動機付けで部下に仕事をしてもらうには、対話の中で仕事の目的に納得してもらうことが大切だ。さらに、「この仕事は私だからできる」という有能感と、「自分でコントロールできる余地がある」という自己統制感が欠かせない。上司がこうした支援をすることで、部下の“やる気”を醸成することができるのだ。

 「『ビジョナリーカンパニー』シリーズで高名なジム・コリンズの近刊『ビジョナリー・カンパニーZERO』に『真のリーダーシップとは、従わない自由があるにも関わらず、人々がついてくることだ』という言葉がありました。まさに人の心を動かすということです。課長や部長だから、もっといえば社長だから部下がついてくるわけではありません。“あなたがリーダーだから”部下がついてくるというチームを作らなければいけません。上司力(R)とは部下に任された仕事をやりたいと思わせる技術なんですね」(前川氏)

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