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ドラッカーに学ぶ「部下に成果を上げさせるために、上司がするべきたった1つのこと」とは?ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

「マネジメント」という概念を一般に広めた経営学者、ピーター・ドラッカー。著書『マネジメント』などで語られている彼の言葉には、21世紀の現代にも通じる経営に役立つ考え方がつまっている。ドラッカーの理論で経営チームのコンサルティングを行う山下淳一郎氏に、3回にわたりドラッカーの教えに基づいた部下に成果をあげさせるための方法を学ぶ。

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 2つ目の法則は、「全体を把握できる階層で行う」ということだ。例えば、ある会社で東日本営業所と西日本営業所、2つの営業所があった。それぞれの営業部長は、両方の営業所を統括する本部長から「値引率は任せるから、とにかく売り上げ目標を達成しろ」という指示を受けていた。そんな中、ある会社から、東日本と西日本の両営業所に、同じ巨額の見積もり依頼が入る。それぞれの営業部長は自身の権限で値引率を設定し、西日本は「55%」、東日本は「49%」を値引きした見積もりを提出したところ、見積もり依頼をしてきた会社から「同じ見積もりでなぜこれだけ金額が違うのか」と本部長へクレームが入り、2人の営業部長は本部長から叱責された……。

 「値引きは任せた」と言われていたのに叱責されたことで、2人の営業部長は「口では任せたと言われても、結局は何も任されていない。逐一上司に報告し、了承を得てから仕事を進めるようにしよう」という考えとなってしまう。結局は、部下の仕事に対する意欲と責任感を落としてしまう結果になっている。

 「“何%以上の値引きは本部長決済が必要”といったルールが定められていれば、組織の混乱は避けられたはずです。重要な決断は、全体を把握できる階層で行うというのが、2つ目の法則です」(山下氏)

 1つ目の法則の「権限委譲」と、2つ目の法則の「全体を把握できる階層」。この相反する2つの原則を踏まえたふえで、部下に責任を与えていく必要がある。

部下とのコミュニケーションの事例

 リクルート創業者の江副浩正氏は、東京大学在学中にリクルートを創業している。最初から社長という立場にあり、仕事上で上司にあたる人がいなかった。そのため、ピーター・ドラッカーを自分の師匠と考え、ドラッカーの言葉を実践していたといわれている。

 「江副さんはドラッカーが言う“知識労働者”という言葉をかなり意識していたそうです。例えば『例の件について、君はどう思う?』と部下に聞きます。聞かれた部下は自分の考えを述べます。『そうなんだ。それはどうして?』(江副)、『こういう風な理由でこう考えました』(部下)、『なるほど、ではどうすればいいと思う?』(江副)、『このようにすればいいと思います』(部下)、『そうか。では君がそれをやってくれる?』(江副)、『やらせていただきます!』(部下)。このように江副さんは部下に働きかけていたそうです。ここには一切、指示命令はありません。部下が自分の意見ややり方を考えて江副さんに伝えたことで、責任を持って仕事にあたるようになります。こうやって江副さんは部下を方向づけ、成果を上げる存在へと引き上げていきました」(山下氏)

上司がしなければならない1つのこと

 成功(部下が成果を上げている状態)の鍵は、部下に責任を与えることにある。指示命令で部下を動かそうとすると、部下が自分で責任を持ってその仕事にあたろうという発想もなくなる。部下が「自分の仕事の最終責任者は自分なんだ」と思って仕事をすることが、成功へとつながるのだ。権限委譲と全体を把握できる階層という2つの原則を意識しながら、権限と責任を明確にしなければならない。

“成功の鍵は責任である。自らに責任をもたせることである。あらゆることがそこから始まる。大事なものは、地位ではなく責任である。 ピーター・ドラッカー”

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